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(5) インフルエンザの予防接種は必ず受ける

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〔2018/11/11 改訂〕

(1) インフルエンザの流行について

秋のベンチ

 もうすぐ12月です。冬休みが明けるとすぐに地方校の東京入試が始まり、1月下旬には埼玉・千葉の入試が始まります。そして2月からの東京・神奈川入試のスタートです。寒さが増し、空気が乾燥するこの時期になると心配になるのがインフルエンザの流行です。

 インフルエンザはウイルスの感染によって引き起こされる、高熱や喉の痛みなどのさまざまな激しい症状を伴う流行性感冒です。インフルエンザウイルスは極めて感染力の強いウイルスで、容易にヒトからヒトへと伝染します。また、少しでも効率よくヒトに寄生しようと、毎年“型”が変化するという厄介な性質があります。厚生労働省は、海外の研究機関とも密接に連繋しながらその年に流行するウイルスの型を予測して、それに基づいて“十分な量のワクチンを確保する”としていますが、2017年,2018年と2年続けてワクチンは品薄と供給遅れが続いており、今後も諸般の複雑な事情から安定したワクチン供給には不安が残っているようです。

 例年、11月になると患者数が増え始め、12月には流行が始まるとされています。しかし、2016年の関東地方では異例の速さで患者数が増加し、栃木県では前年同期の7倍を超える勢いで患者が急増したと報告されました。2018年には東京で9月に流行の開始が報告されるなど近年は早期に流行する傾向が著しく強まっています。特に人口密集地が数多くある首都圏では、ひとたび患者が発生すれば爆発的に流行が拡大すること(パンデミック)が強く懸念されています。


(2) インフルエンザの予防接種は早めに受ける

 インフルエンザの予防接種は強い感染力を持つウイルスから身を守るために不可欠なものですから、まだ済ませていない受験生は一刻も早く受けて下さい。ここでは、インフルエンザの予防接種に関する正しい知識をわかりやすくご説明したいと思います。

① ワクチンを打ってもすぐに効果が出るわけではない!

 インフルエンザのワクチンは接種したらすぐに効果が現れるわけではありません。ワクチンが体内で抗体(ウイルスを撃退する物質)が安定的に作られるまで2~3週間ほどかかると言われています。流行のニュースを聞いてからワクチンを打っても間に合わない場合もあるので、早めに受けることが望ましいのです。

② お子様は、大人以上に抗体の形成に時間がかかる!

注射器

 大人とちがってお子様は2回に分けてワクチンを打つ必要がありますから、大人よりも体内で抗体が形成されるまでに時間がかかります。もし1回目と2回目の接種の間に風邪をひいたり体調を崩したりすると、快復するまで2回目の接種ができなくなり、抗体の形成がさらに遅れることになります。 こうしたリスクを回避するためにも、早めに接種しておくことをおすすめします。

③ インフルエンザの予防接種は10月末を目安に打つ!

 例年、医療機関では10月に入ると予防接種の予約受付を始めますが、多くの人が予防接種を意識し始めるのは11月に入ってからです。10月ならまだ暖かい日が続いているので風邪の流行前で医療機関は空いていること多いですし、お子様の体調管理にさほど気を遣わなくてもよいというメリットもあります。9月中にかかりつけ医などに相談して状況を確認した上で10月の早い時期に予約を済ませ10月末をめどにして予防接種を受けるのがよいでしょう。

 10月中に予防接種を受けるメリットは他にもあります。記事の冒頭でもご紹介したように、ここ数年は急な流行が始まったりワクチン供給量が少なかったりして、ご希望通りに予防接種が受けにくい状況が続いています。数年前に鳥インフルエンザが騒がれていた頃、想定外の人々が予防接種に殺到して大量のワクチン不足が発生し、予防接種が受けられなかった方が続出したということがあったのを覚えておられますか? あのときは、国が乳幼児やお年寄りなどに優先権を設定したので小学生でも受けられない方が続出しました。そうした想定外のリスクが常にあるということも考えに入れておいた方がいいかもしれません。

④ 受験生本人だけでなく、家族全員で受ける!

 予防接種は受験生本人だけが受ければいいわけではありません必ずご家族全員で受けることが基本です。万が一、家族の誰か1人でもインフルエンザにかかれば家中にウイルスがばらまかれることになります。

⑤ 早く打っても効果が弱まったりしない!

 「あまり早く予防接種を受けると2月の入試までに効果が切れてしまう」という話を耳にしますが、その理解は正しくありません。厚生労働省は疫学的検証に基づいてインフルエンザの予防接種の効果(体内の抗体価)は3か月は確保されることを保証しています。また、3か月過ぎても急激に抗体価が落ちるわけでもなく、入試が終わるまでなら効果は維持されます。予防接種を遅らせることで急な大流行に対応できないリスクの方がずっと大きいのです。

⑥ 予防接種は症状を軽くすることに寄与する

 「インフルエンザの予防接種を受けなくてもインフルエンザにかかったことはない」,「予防接種を受けたのにインフルエンザにかかった」というような話を耳にします。どちらも誤りではないですが、正しい理解でもありません。健康で体力のある人なら、ウイルスに感染しても発症する前に自分の免疫で撃退することは可能です。また、ワクチンはその年に流行するものを予測して作られますから、流行型が違ったりウイルスが変異したりすることによってワクチンの効果が限定されることはあり得ます。しかし、多くの場合、型が違ってもワクチン接種によって発症を抑えたり重症化を抑える効果はありますから、ワクチン接種は必ず受けましょう。

⑦ 毎年打ち続けることによる加重効果も期待できる!

 これは一般には知られていないことですが、接種から時間が経ったからといって予防接種の効果(体内の抗体価)が毎年0になるわけではありません。 アンプル  例えば、抗体価が70%以上あればウイルスを効果的に撃退できるとしましょう。ワクチン接種を受けて体内に抗体ができると抗体価が100になり、時間が経過すると徐々に抗体価が低くなっていわけです。抗体価は3か月で70ほどになるというイメージです。そして翌年の流行前には30~40くらいになってしまうので、次の流行前にワクチン接種を受けて抗体価を戻すというわけです。 誤解のないように繰り返せば、抗体価が70あれば充分にウイルスを撃退できるわけですから、それ以上(100とか90)あっても効果が強いわけではありません。 毎年予防接種を繰り返すことで抗体価を戻す量が小さくて済むのもメリットですし、流行の端境期にも体内に抗体は残っているので、想定外の流行にも一定の効果が期待できます。現在5年生以下の方も、毎年接種を受けられることをおすすめいたします。

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