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(1) 手だけでなく顔も洗う

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〔2018/11/1 改訂〕

今回から4回に分けて、日常生活で習慣化しておきたい健康管理の方法についてお伝えします。

 ウイルスは極めて微小な固体で、空気中に飛散したウイルスはわずかな空気の動きでも容易に拡散します。例えば、窓を閉めきった教室の中で風邪を引いた子供が咳をすれば、教室の中にはウイルスが飛散します。その子がゴホゴホと咳をしてる間中、ウイルスの飛散は続くわけです。休憩時間に子供たちが動き回って教室の空気がかき回されれば、飛散したウイルスはあっという間に教室にいる子供たち全員の身体にくっつくことになります。

 冬は特に空気が乾燥しているため、一度飛散したウイルスは空気中を漂い続けます。そして、子供たちの手や顔などの皮膚(湿っているのでくっつきやすい)や凹凸のある衣服の表面に容易にくっつきます。子供(大人もですが)は無意識に手でいろいろなところを触ります。顔を触ったり目をこすったり袖口で鼻を拭いたり・・・。そうした無意識の動きが原因となり、ウイルスが目や鼻の粘膜から体内に侵入してしまうのです(感染)。したがって、ウイルスの感染を予防するためには、ウイルスが粘膜につかないような対策を講じる必要があるわけです「風邪予防にはまず手洗いを」と言われるのは、身体についたウイルスを粘膜につけないようにするためなのです。

秋のベンチ

 さて、多くの人が風邪のシーズンには手洗いを励行しますが、私に言わせればそれでは不十分なのです。その理由はもうおわかりでしょう。人は1日に何回も手を洗うので何時間もウイルスが手にくっついたままになることはまずありません。しかし、真冬に1日に何度も顔を洗う人は稀ですから、人の顔には手よりもずっと長時間にわたってウイルスがくっついたままになりがちなのですいくら手をきれいに洗っていても、その手で顔をこすってしまえば、再び手にウイルスが付着するだけではなく、ウイルスを目や口にこすりつけてしまいます。だからこそ、『手だけではなく顔もしっかりと洗う』ということがウイルス感染の予防に大変効果的となるのです。

 しかし、お子様が外出先で顔を洗うのは決して簡単なことではありません。そこで私がおすすめするのがウェットティシュで顔を拭くという方法です。もちろん、顔を拭くだけでは洗うときのようにウイルスをしっかり洗い流せるわけではありません。しかし、目や鼻のまわりを意識して拭くように心がけるだけで付着したウイルスの数を減らす効果は十分期待できます。

 ただし、顔を拭くことで付着したウイルスを塗り伸ばさないように注意が必要です。そのためには1枚で拭こうとせず、何枚か取り替えながら常にきれいな面で拭くように心がけるといいでしょう。

 なお、ウェットティシュはお子様が使いますし、アルコールがウイルスを殺すわけではありませんからアルコールの有無は気にせず、ノンアルコールタイプでいいでしょう。また、どんどん使うのですから“お徳用”として売られているような安価なもので十分だと思います。ぜひお試しください。


(2) マスクを上手に使う

 マスクを嫌がるお子様は少なくありません。親がマスクをさせても、すぐにあごの方へ下げてしまいます。それは、マスクをすると息苦しく感じるからです。 勉強するときの脳は大量の酸素を消費しますから、マスクをすると大きく息を吸えないので呼吸がしにくくなるような感じがして嫌がるのでしょう。 しかも、高機能のマスクほど目が細かいので、余計に息苦しく感じるわけです。

マスクの女性

 マスクをすることによってウイルスの吸入を遮断することはできません。ウイルスは極めて小さなものですから、マスクのメッシュを容易に通過してしまいます。 たとえ高機能マスクを使っても、今度は顔とマスクの周位にできるすき間から空気が出入りしてしまうので、やはり完全に遮断できません。

 では、何のためにマスクをするのでしょう。それは喉の保湿のためなのです。喉粘膜の乾燥を極力防ぎ、呼吸を楽にするためにマスクを使うのです。 お部屋の中で加湿器を使って湿度を50%以上に保つにはそれなりの時間もコストもかかりますが、1枚10円にも満たない普通のマスクを着けるだけで吸気の湿度を十分に高めることができます。 呼気によって潤った空気を再び吸いこむことによって呼吸が楽になることで、喉からウイルスに感染するリスクを減らすわけです。

 マスクを使うときに気をつけることがもう1つあります。それは、屋外で使ったマスクを室内で使わないということです。 外気温の低い屋外でマスクを使うと呼気の水蒸気が結露してマスクの内側につき、マスクの目を塞いでしまいます。これでは十分に空気が通りませんし、着けていて気持ちのいいものでもありません。 学校や塾の教室などの室内に入ったら、そこで新しいマスクをつけるようにすればいいでしょう

 私は、外出する際には室内で使っていたマスクをそのまま使い続け、目的地に着いて室内に入ったタイミングで新しいマスクと交換するように努めています。 これは、屋外でマスクについたウイルスを室内に持ち込まないための方策でもあります。 なお、誤解のないように断っておきますが、混んだ電車・ターミナル駅や繁華街などの雑踏など、大勢の人がいる場所でない限り、空気中を飛散するウイルスはほとんど無視できます。 数があまりにも少ないからです。屋外でマスクを着けるのは、あくまでも喉の乾燥を防ぐことが目的であって、ウイルス予防には無関係です。



(3) 外から帰ったら必ずうがいをする

 手洗いとともに、インフルエンザや風邪の感染予防に極めて高い効果をもたらすのがうがいです。 たとえマスクをしていても、うがいをしなくていいことにはなりません。外出先から帰ったら、必ずうがいをする習慣をつけることを強くおすすめいたします。

 ところで、「ちゃんとうがいをするには、“うがい薬”を使わなければならない」と考えている方がいるかもしれません。しかし、それは正しくありません。 うがいでいちばん大切なのは、“回数”です。室内にいても、喉の乾燥を感じたら、すぐに水道水でサッとうがいをするのがいちばんいいのです。

 口の中にはさまざまな菌(バクテリア)がいます。その中には善玉菌と呼ばれるものもいます。うがい薬でうがいをすると、口腔内のすべての菌が殺されてしまうのです。 善玉菌がいることで悪玉菌の繁殖が防げていたのに、うがい薬で根こそぎ菌を殺してしまうことは、かえって悪玉菌を利することにつながってしまうのです。 ですから、うがい薬はあまり頻繁に使わず、決められた処方をきちんと守りましょう。

 ところで、うがいが最も効果的なのは就寝前というのをご存知でしょうか? だ液は弱いアルカリ性に保たれてることで、雑菌の繁殖を抑えています。 ところが、就寝中はだ液の分泌が減ってしまうので、口腔内の悪玉菌が繁殖を始めるのです。就寝前に薬用のマウスウォッシュなどでうがいをすることで、 悪玉菌の増殖を抑えられるとともにウイルスの予防にもつながるというわけです。



(4) なによりも十分な睡眠を

幸せそうに眠る犬

 入試が近づくにつれ、真面目な受験生ほど夜遅くまで起きて勉強しようとしますが、生活が不規則になったり睡眠不足になったりすることは極めて大きなリスクです。もし体調を崩して寝込んだり、体調がすぐれないのに無理をして集中できないまま勉強を進めたりするようなことになれば、何をしているのかわかりません。精神的にも肉体的にも疲れが溜まりやすいこの時期だからこそ、十分な睡眠時間を確保することは体調管理の基本中の基本です。

 お子様は不安だからこそ無理をして勉強時間を増やそうとするのです。そんなときに親までが「そうね、もう少し頑張らないとね」などと言うのは、そんな気持ちがなかったとしても子供の不安を増長させることに繋がるということを忘れないでください。「何を言ってるの? すべては体が資本なのだから、ちゃんと眠りなさい」とどっしりと構えてそう言ってあげてください。起きている時間の中で頑張るというルールを、親が率先して守ることが何よりも大切なのです。



 ここまで、受験生に焦点を当てて書いてきましたが、体調管理に気をつけるのは受験生本人だけではありません。ご家族全員が自分の健康をしっかりと維持することが大切です。

 そのためにお母様ができることの1つは、季節の食材をふんだんに使って栄養バランスと消化のよいお食事を作ることではないでしょうか。なかなか家族みんなが揃わないことも多くなるこの時期ですが、数少ない機会でも美味しい物を“楽しく”いただくことも大事なのではないかと思います。

 家族みんなから醸し出される精神的な余裕は、単に身体のことだけではなく、気持ちの上でも重要な要素ではないかと、私は強く思います。

 健全な精神・身体こそが受験の基本だということを、どうぞお忘れなく!

サクラ

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