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(6) 日食や月食に関する問題

レベル表示:☆☆★★

〔2019/01/03〕

 2018年は、2011年以来7年ぶりに1年の間に皆既月食が2回も見られた珍しい年でした。特に7月の皆既月食は月入帯食という現象が見られたことでも注目された月食でした。さらにこの日は、太陽・地球・月・火星の4つの天体がこの順で一直線上に並ぶという極めて珍しい現象が起こった日でもありました。

 そして2019年。年明け早々の1月6日には部分日食が見られます。こうした理由から、2019年の入試でも日食や月食に関する問題が出題される可能性が高いことは容易に想像がつきます。特に今年が狙われるというわけではありませんが、日食・月食に関する問題は多くの中学入試で頻繁に出題されていますから、典型的な問題はもちろん、時事的要素の強い問題に関してはきちんと理解しておく必要があるでしょう。そこで今回は、月食や日食に関する問題を取り上げましょう。今回の問題は一部を除けば月食や日食の典型的な問題ばかりです。現6年生だけでなく新6年生(現5年生)の皆さんもぜひチャレンジしてみてください。


【問題】

皆既月食

(1) 日本で皆既月食が見られるとき、月はどのように欠けていきますか。正しいものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。

 ア.月は右側から欠けていき、左側から満ちてくる。

 イ.月は左側から欠けていき、右側から満ちてくる。

 ウ.月は右側から欠けていき、右側から満ちてくる。

 エ.月は左側から欠けていき、左側から満ちてくる。

(2) 日本で皆既月食が見られるとき、日本とほぼ同じ経度にあるグアム(北緯15度)やオーストラリアのアデレード(南緯35度)で月はどのように見えますか。正しいものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。

 ア.日本と同じように皆既月食が見られる。

 イ.日本以外では月が見えないので、月食も見られない。

 ウ.月は日本と同じように見られるが、月食は見られない。

 エ.赤道に近いグアムでは月食は見られないが、アデレードでは月食が見られる。

 オ.北半球のグアムでは月食が見られるが、南半球のアデレードで月食は見られない。


スーパームーン

◎ 最近、スーパームーンという言葉をよく聞くようになりました。この言葉は正式な天文用語ではありませんが、大きく見える美しい満月に人々の注目が集まるようになってきたのでしょうか。例えば、2019年のスーパームーンは2月20日の満月です。月の公転軌道は完全な円形ではなく、地球が回転の中心となる楕円軌道です。月と地球の平均距離は約( A )万kmですが、その最大値と最小値の差は優に4万kmを超えるので、地球から見える満月の大きさが変わって見えるのです。また、月が地平線の近くにあるとき(月の出や月の入りのとき)は月が大きく見えますが、月が南中して空高くにあるときは小さく見えることはよく知られています。

(3) 文中の( A )にあてはまる数を整数で答えなさい。

(4) 実は、月が地平線近くにあるときと南中しているときでは、地球から月までの距離には大きな差が生じます。

① 1日のうちで月までの距離が短い方を選び、アまたはイの記号で答えなさい。

 ア.月が地平線の近くにあるとき    イ.月が南中しているとき

② このときの距離の差は約何kmですか。ただし、必要な場合には、地球の直径は約13000km,月の直径は約3500km,地球から月までの距離は約( A )万kmとしなさい。

(5) 皆既月食のときに月が完全に地球のかげにかくれたときも月は真っ暗にはならず、上の写真のように月面全体が赤暗く光って見えます。月面がこのように見える理由を25字以内で簡単に答えなさい。

(6) 地球全体で見たときに月食と日食が起こる回数を比べると、理論的には月食よりも日食の方がずっと多く起こることになります。しかし、現実には日食よりも月食の方が多く観察できるのです。このような違いが生じる理由の1つに、日食がせまい帯状の範囲でしか観察できないことが挙げられますが、それ以外にもう1つ大きな理由があります。その理由を20字以内で簡単に答えなさい。

(7) 2018年7月の月食でよく聞かれた「月入帯食」について、簡単に説明しなさい。


◎ 2019年1月6日には部分日食が見られます。

(8) 日食のとき、太陽はどのように欠けていくのが見られますか。正しいものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。

 ア.太陽は右側から欠けていき、左側から満ちてくる。

 イ.太陽は左側から欠けていき、右側から満ちてくる。

 ウ.太陽は右側から欠けていき、右側から満ちてくる。

 エ.太陽は左側から欠けていき、左側から満ちてくる。

(9) 日本で部分日食が見られるとき、日本とほぼ同じ経度にあるグアム(北緯15度)やオーストラリアのアデレード(南緯35度)で月はどのように見えますか。正しいものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。

 ア.日本と同じように部分日食が見られる。

 イ.太陽は出ているが、日食は見られない。

 ウ.赤道に近いグアムで日食は見られないが、アデレードでは部分日食が見られる。

 エ.北半球のグアムでは部分日食が見られるが、南半球のアデレードで日食は見られない。

日食











 今回取り上げた問題の多くは過去の入試で出題されたことのある問題です。的中するかどうかはわかりませんが、日食や月食に関する基本的な問題については再確認をしておく価値はあるでしょう。


 最後に、解答例と簡単な解説を挙げておきます。

【解答例】(1) エ   (2) ア   (3) 38  (4)① イ  ② 6500km 

     (5) 地球の大気層で屈折した赤い光が月を照らすから。(同意可)

     (6) 日食はその多くが海上で起こるから。(同意可)

     (7) 月の一部が欠けた状態のまま地平線の下にしずむこと。(同意可)

     (8) ウ  (9) イ

【解説】

(1) 月食は月よりも速く動く地球のかげ(本影)が月を追い抜くことで起こるので、月は左(東)側から満ち欠けする。

(2) 月食は、月が見える場所であれば地球上のどこからでも観察できる。

(3) 地球から月までの平均距離は、およそ384400kmである。

(4) 月が南中しているときに比べて、月が地平線上に見えているときは、地球の半径に相当する長さ(約6500km)だけ地球から遠ざかることになります。それでも、人の目には地平線上にある月の方が大きく見えてしまうのです。

(5) 赤い光は青い光よりもよく曲がります。日光が地球のまわりにある分厚い大気層で屈折すると、青い光は曲がりにくいのであまり月に当たりませんが、よく曲がる赤い光が多く月面を照らすことになるので赤銅色に赤っぽく見えます。

(6) 地球の陸と海の面積比は約3:7ですから、地球上で起きる日食の多くは海上で起こることになります。そのために、日食は月食ほど多くは見られないのです。

(7) 月が食を帯びたまま(一部が欠けた状態のまま)月の入りを迎えることを月入帯食という。

(8) 日食は月よりも速く動く太陽が月を後ろ側から追い抜くことで起こるので、太陽は右(西)側から満ち欠けするように見える。

(9) 日食が起きているときの地球の表面を宇宙から見ると、黒い点のような月の本影(皆既日食の範囲)と、そのまわりに月の半影(部分日食の範囲)があるのがわかる。日食は地球のせまい範囲でしか起こらないので、日本で日食が見られるとき、遠く離れた他の場所で見ることはできない。


 いかがでしたか? これらの問題は、すべて「月の満ち欠けと動き」の内容の応用問題です。月の形の変化を単なる暗記事項として捉えていては、こうした問題を考えることはできません。 “事象の原理やしくみを科学的にしっかりと理解しておく必要がある”というのがこの問題からのメッセージなのです。また最初にも触れたように、身の回りで起きているさまざまな科学的事象について、いつも好奇心を持ってアンテナを張っておき、興味の目を向けておく必要があるということも、もう1つの大切なメッセージとして覚えておいてください。


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