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月の動き(2) ~月の南中時刻のずれは48分じゃない?!~

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〔2020/09/25〕

 前回の記事(月の動き(1) ~月は遅刻魔って知ってた?~)では、月の南中時刻は1日あたり「50.47分(50分28秒)」ずつ遅れていくと紹介しました。この値は、天文年鑑などにも載っている正確な値です。しかし、この数値を見たとき、よく勉強しているお子様ならすぐに「あれ?48分じゃないの?」と言うでしょう。ほとんどの塾では、「1日は1440分で、月は30日の周期で満ち欠けするから、1日あたりのずれは、1440分÷30日=48分 となる」と教えるからです。しかし、この考え方は大事なことを見落としています。いったいどこが違うのでしょうか?

満月前後の月の動き

 右の表は、国立天文台のウェブサイト上の資料から、2014年1月15~17日の暦(こよみ:月の出・南中・入りの時刻をまとめたもの)です。表の1/16の 南中時刻が--:--になっているのはなぜでしょうか? ヒントは、月の出・南中・入りの時刻は、いずれも毎日約50分ずつ遅くなるということです。

 この表をきちんと読み取ってみましょう。まず、1/15の16:15に出た月は1/15の23:20に南中するのはわかるでしょう。しかし、この月が1/15の5:40にしずむわけがありません。15日の夕方に出た月が、15日の早朝にしずむはずがないからです。つまり、15日の夕方に出た月は日付の変わった1/16の6:21にしずむのです。そして同様に、1/16の17:08に出た月は、日付が変わった翌日の1/17の0:06に南中し、1/17の6:59にしずむと読み取るわけです。赤字で強調した15日と16日に出た月の南中時刻を比べれば、先ほどの質問の答えがすぐにわかりますね。南中時刻が--:--になっている理由は、「1/16には月が南中しないから」です。ちなみに、1/16の夕方に出た月は1/17の真夜中(0:06)に南中するので、満月であることはわかりますね。

 このように、満月の前後には月が南中しない日が必ず1日あります。そのために、月が約30日の周期で満ち欠けする間に"月が南中する日数"は、30日より1日だけ少ない29日となるのです。したがって、1日あたりの月の南中時刻のずれは、1440分÷(30-1)=49.6=約50分となります。なお、月の満ち欠けの周期をより正確に表すと約29.530日となります。そこで、この値を使って計算すれば、1440分÷(29.53-1)=約50.47分となり、資料集に載っている正確な値を計算で求めることができるのです。


(保護者の方へ)

 実際の月の動きはとても複雑です。一定の速さで動くわけでもなく、きれいな円軌道上を動くわけでもありません。そのため、実際の動きとは異なる“単純化された動き”で考えることが多くなりがちです。「1440分÷30日=48分」という正確ではない計算は、そうした単純化の最たる例というわけです。

 月の動きはお子様にとってもなかなか理解しにくいテーマですから、単純化することによってイメージがしやすくなる効果はありますが、正しい理解を妨げる場合があることも忘れてはなりません。“単純化された動き”と“実際の動き”はちがうことを、ちゃんと意識しておく必要があるということです。特に、最難関校を志望しているお子様は、理解するのに多少の時間がかかっても、正しい考え方もきちんと身に着けておかれた方が望ましいのではないでしょうか。


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