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月の動き(1) ~月は遅刻魔って知ってた?~

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〔2020/09/23〕

 月の出の時刻・月の南中時刻・月の入りの時刻は、いずれも毎日大きく変化します。小学生の皆さんだけでなく世の中の多くの人は「月は一定の速さで規則的に地球のまわりを回っている」と思いこんでいます。しかし、実際の月は下の図に示したように、とても複雑な動きをすることを、月の満ち欠け(1) ~満月は午後6時に上らない?!~では説明しました。

月の軌道

 実際の月は地球の4分の1もの大きさをもつ重く巨大な天体なので、潮の満ち干が起きるほど月の引力は強いのです。したがって、多くの皆さんがイメージしているような、月が地球を中心にしてきれいな円に近い軌道を一定の速度で公転するようなことはありません。それどころか、月が公転するときは地球さえもゆれ動かしてしまうので、上の図のように、月は速くなったり遅くなったりして、地球のまわりをまとわりつくような月のな複雑な動きをするのです。しかし、中学入試の問題では、このような複雑な月の動きを簡単に扱えるように、ほとんどの問題はいろいろな月の動きを平均化して考えるようにしています。

 ところで、今回のタイトルになっている月は遅刻魔とは、いったいどういうことでしょうか。月は毎日約50分ずつ遅れて南中します。50分というのはおよその値で、正確な平均値は「50.47分(50分28秒)」です。

 上の図からわかるように、実際に月が地球のまわりを動く速さはまったく一定ではなく、速くなったり遅くなったりしますが、それを平均すると1日あたり50分28秒ずつ遅れていくのです。そのため、月の出も月の入りも同じように毎日遅れていくことになります。

 例えば、新月のとき、太陽と月はほぼ同時に上り、ほぼ同時に西の地平線の下にしずみます。新月は常に太陽のそばにあるので見えないのです。しかし、その2日後の三日月になると、月の出は日の出よりも2時間ほど(50×2=100分)遅れます。分かりやすく言えば、「2時間の遅刻」ですね。だから、しずむ時刻も約2時間遅くなるので、三日月は日がしずんだ後の2時間ほど、西の地平線上に見られるわけです。

 さらに、新月の約1週間後に見られる上弦の月になると、月は太陽が上ってから約6時間後の正午ごろにやっと上ってきます。このとき、太陽はすでに南中しています。そして、太陽が西の地平線の下にしずむ夕方になって、やっと上弦の月は南中します。やがて、新月から15日後の満月になると、月の出と日の出はほぼ半日(12時間)ずれることになるので、満月は太陽と正反対の位置に見えるわけです。

 こうして、月の出の時刻は毎日平均して約50分ずつ遅れ続けていき、やがて遅れ続けていた月に太陽の方が追いついてきます。いわゆる“周回遅れ”の状態になるわけで、月の出と日の出が同じ新月に再びもどります。このように、月はただひたすら太陽に遅れ続けて、月がその遅れを取りもどすようなことは一切ありません。これが月は遅刻魔だという理由です(笑)。

 月の動きに関する問題にはさまざまなものがありますが、このような地球から見た月の見かけの動きを正しく理解しておくことは、他のことを理解する上で非常に重要なことです。特に入試で非常によく出題される日食や月食を正しく理解するための基礎になることなので、必ず覚えておいてください。

 さて次回は、「月が南中する時刻は、平均すると毎日約50分ずつずれる」ことについて、詳しく説明していこうと思います。


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