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中学入試の理科って難しい? (1)

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〔2017/03/14 改訂〕

 ほとんどの中学校の理科の入試問題は、生物・地学・物理・化学の4分野からバランスよく出題されており、暗記と計算の出題比率は、ほぼ暗記事項:計算問題=7:3 という感じです。

もちろん、一部の最難関校ではそれなりに計算問題の比率が上がりますが、それでもせいぜい5:5(ほぼ半々)になる程度と考えてよいでしょう。

 “中学入試の理科は難しい”というイメージがあるようですが、多くの学校では暗記事項をしっかりと身に着けていれば、十分に合格ラインを越えることが可能です。

 それでは、どうして中学入試の理科は難しいというイメージがつきまとうのでしょうか。その理由として真っ先に挙げられるのは「出題範囲」です。 例えば一般の公立高校の入試問題は、文部科学省が定めた「学習指導要領」からの逸脱は“一切”許されません。 つまり、入試問題はすべて教科書に載っている内容だけで構成されていますから、教科書および教科書準拠の問題集を完璧にマスターしておきさえすれば、確実に満点が取れると言えるのです。

 一方、私立中学の入試問題にそのような縛りはありませんから、各学校が私学の自主性の中で独自に判断して「うちの中学校を受験する生徒なら理解しておいてほしいと考える内容」から出題されるのです。 (もちろん、教科書の範囲(内容)に準拠して作問される中学校もあります。)

木と水滴

 例えば、2013年春の中学入試で“iPS細胞”について出題した中学校がいくつもありました。また、2017年春の中学入試では『オートファジー』に関する出題を麻布中がしています。 いずれも、ノーベル賞の受賞に際しては、テレビや一般紙だけではなく小学生新聞にも取り上げられていましたから、中学受験をする生徒なら当然理解しておくべき内容を問われただけです。

 しかし、公立高校の入試にこうした問題が出題されることはありません。中3生なら小6生以上によく知っているはずなのに公立高校の入試には出題されないのは、「教科書に載っていない内容」だからです。


 中学入試では小学校で習うことを“基礎”にした上で、小学生でも理解できる(と中学校の先生が考える)さまざまなことがすべて出題範囲に入ってきます。 その中には、大人でもハッとさせられるような題材も少なくありません。中学入試の問題は、それぞれの中学校の先生方が、「うちの学校に来る生徒には、こうしたことに興味を持って勉強しておいて欲しい」という強いメッセージをこめて作問されているのです。 市販の問題集や塾のテキストをいくら解いてもなかなか“対応しにくい”と思えるような問題が出題されることが、中学入試の理科が難しいと思われている原因になっているのかもしれません。

 しかし、誤解をおそれずにあえて申し上げるなら、本来勉強というものは未知のものに対する強い好奇心と探究心が表裏一体となったものであるはずではないでしょうか。 私立中学の先生方がさまざまな工夫をこらした問題を入試に出題されるのは、ふだんから好奇心を持って、身の回りにあるさまざまな事象を科学的な見方で観察して考えて欲しいという強い想いがあるからなのだと私は思います。

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