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新6年生の受験勉強(7) ~算・国に偏る勉強がはらむリスクを考える~

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〔2019/02/11 改訂〕

 新学年の授業が始まったばかりの今の時期、塾の中には「今は算数と国語に重点を置いて勉強しましょう」という指導をしているところもあるでしょう。4・5年生の間に身に着けておかねばならない基礎力が十分ではないお子様(や保護者)に対して、「4科目の勉強を並行して行っていくと、どの科目の勉強も中途半端になりかねず、夏休みになっても基礎力が十分身に着いていないという最悪の状態に陥るかもしれない」という理由から、「まず算・国をしっかり固めましょう」と言うわけです。確かに算数と国語の実力が伴わないのに理科だけできても仕方ありませんが、そうは言ってもあまりにも算・国に偏りすぎた勉強をするのは非常に危険です。特定の科目に学習時間を集中して勉強を進める手法は最後の手段なのです。最初にこのことについて、もう少し掘り下げます。

コンパスと青い世界地図

 学習時間を大幅に減らした科目の成績は必ず下がると思う必要があります。必要な勉強時間が取れていないのに成績が保たれたり上がったりするはずがないからです。このように申し上げると、「最低限の成績を維持するために必要な学習時間は確保する」と言われるかもしれません。しかしそれができると言うのなら、そもそも算・国に学習時間を集中させる必要もないはずです。

 このこと以上に重要なことがもう1つあります。それは、いつかは算数・国語の勉強時間を減らして理科の勉強時間を戻さなければならなくなるという意識が希薄になるということです。「自分は算・国に集中しているのだから、まわりと同じような成績で満足していてはいけない」という強い意識を持って勉強しなければなりません。しかし、お子様にとって目の前にある算・国の勉強という“見えているもの”に取り組むだけでも一苦労なのに、理科の学習時間を“借金”して算・国に当てているという“見えていないもの”を意識しながら戦うことは至難の業と言えるでしょう。見えない敵と戦うことは大人ですら困難なことなのです。実際にやってみればすぐにわかることですが、たいていのお子様は目の前に見えていることしか考えることができません。“やらなくて済むようになった”理科のマイナスを意識しながら、まわりのお子様以上に算・国の成績を伸ばしていくのは本当に困難なことなのです。

 もし算・国の成績が上がらなければどうなるでしょうか。算・国の成績が想定通りに伸びてこなければ、秋以降の受験戦略に極めて大きな打撃を与えることになります。算・国にたっぷり学習時間を使える期限は決まっていて、いつかは理科の勉強時間を戻すときが来ます。そのときには必ず算・国の学習時間は減るのです。秋以降に理科の勉強時間を戻しても算・国の成績を維持していけるだけの効率のよい学習方法と、時間を有効に使う集中力の両方を身につけてこそ、初めて算・国だけに学習時間を集中させる勉強法を成功させられるわけです。

 算・国だけに学習時間を集中させる勉強法は、“選択と集中”とも言えるでしょうが、その戦略が内包するリスクは決して小さくはないのですから、そのリスクを過小評価してはなりません。親子で良い面だけではなく悪い面もよく吟味した上で、失敗は決して許されないという強い覚悟を決めて臨む“背水の陣”という位置づけで取り組む必要があると私は強く思います。「算・国に集中して勉強しよう」というキャッチフレーズは耳に心地のよいものかもしれませんが、安易に飛びつくのではなく、うまくいかなかった場合のことも十分に考慮して選択をしていただければと思います。

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