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地震に関する計算問題

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〔2018/08/27 改訂〕

 3回目の今回は地震波の伝わり方に関する計算問題を扱ってみます。

 ところで、理科の計算問題ではさまざまな量的関係を扱いますが、ほとんどは単純な比例関係です。つまり、それぞれのテーマにおいて、何と何が比例関係にあるかを理解していれば、計算問題は必ず解けるのです。

 さて、地震に関する計算問題では震源からの距離は初期微動継続時間に比例するという関係を使います。この関係は“大森公式”として世界中に知られている公式で、“初期微動継続時間”とは「ある場所で初期微動(P波による小きざみなゆれ)が観測され始めてから主要動(S波により大きなゆれ)が観測されるまでにかかる時間(=初期微動が続く時間)」のことです。

地震波のグラフ

 右のグラフは、震源からの距離が3倍ちがう2つの地点で観測した、同じ地震の地震波を模式的に示したものです(入試問題では、横軸が「時間」でなく「時刻」とされている場合が多いです)。このグラフについて理解しておくべき重要なことは次の3つです。

震源からの距離が初期微動継続時間に比例している

 震源からの距離が3倍になると初期微動継続時間も3倍になっていることがわかります。大森公式は、グラフ上でこのように表されるのです。

地震波は一定の速さで震源から伝わる

 P波とS波の伝わる速さは一定の傾きをもった直線で表されています。P波の到達時刻を示すグラフの傾きの方がS波のグラフよりも急なのは、P波の方が速く伝わることを表しています。

震源から離れた場所ほど、地震波の波形のふれ幅は小さい

 震源から近い場所ほど大きくゆれるので、地震波のふれはばも大きくなっています。


 それでは、上の説明を念頭に置きながら、次の【問題】を解いてみましょう。

【問題】

 震源から72km離れたA地点では、9時21分45秒にガタガタという小きざみなゆれが観測され、続いて9時21分51秒にユサユサという大きなゆれが観測されました。また、別のB地点では、9時21分57秒に小きざみなゆれが観測され、続いて9時22分11秒に大きなゆれが観測されました。これについて、次の問いに答えなさい。

 (1) 震源からB地点までの距離は何kmですか。

 (2) この地震によるP波とS波の伝わる速さは、それぞれ毎秒何kmですか。

 (3) この地震が発生した時刻は9時何分何秒ですか。

南海トラフ地震の地震波伝搬

 この問題では、震源から72km離れたA地点の初期微動継続時間は 51秒-45秒=6秒間です。

 これが、この問題を解き進める上でのスタート点になります。

 さあ、正解にたどりつけるでしょうか?


〔例題の問題と解答・解説〕

 今回、この題材を選んだ理由は、グラフを用いた解法を学ぶ意義(意味)についてお伝えしたいことがあったかったからです。

 お子様が問題を解いているとき、途中式を書かずにいきなり答えだけをポンと書くことはよくあります。そんなとき、お子様に「その答えが出る理由を説明してごらん」と問いかけることはありませんか? もちろん問いかけること自体は悪いことではありませんが、お子様がその問いに“言葉で”返答できないとき、「それではわかったことにはならない」と言ってしまうことはないでしょうか?

 「お子様が言葉で説明できない」ことと「問題を理解していない」ことは、必ずしも同義ではありません。どのように説明すればよいのかわからなくても、お子様が問題の本質を直感的に理解していることはよくあるのです。うまく説明できないのは、それを表現する適切な“言葉”が見つからないだけなのかもしれません。

 グラフによる解法は、こういう場合に極めて有効です。うまく言葉で説明できないときに、「実はきみはきっとこんなことを頭の中で直感的に考えていたんだと思うよ」という言葉を添えて示してやるのです。多くのお子様はグラフを苦手としていますから、その嫌いなグラフを自分から使おうとする生徒は普通はいません。しかし、繰り返しグラフを示し続けていけば、お子様のグラフに対するハードルは確実に低くなっていくのです。今すぐには理解できないものでも、必要なものであるなら根気よく見せ続けることが大切なのです。

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