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てこのつりあいの解法(その1)

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〔2022/02/11 リンク修正〕

 さまざまな理科の計算問題の中でも特に苦手とする生徒が多いのが“てこのつりあい”に関する問題です。おもりの数が多かったり、支点が棒の中央になかったり、棒に重さがあったり……。 「てこの問題パターンが多くて、それぞれの解き方を学ばないと解けない」という固定観念が、てこに関する問題をさらに難解に見せている一面もあります。しかし、てこのつりあいの問題には“万能とも言える解法”があるのです。 今回は、どんなパターンの問題でも同じ解法(考え方)で解ける『解法の手順』を紹介しましょう。

てんびん

 この『解法の手順』は、わずか5つの手順にしたがえば、必ず正解にたどりつけるというものです。それぞれの手順に習熟するためには少しばかりの練習が必要ですが、この解法を身に着けるのに膨大な量の問題を解く必要はありません。それぞれの手順の意図を正しく理解した上で、どんな問題を解くときでも必ず『解法の手順』を守って解き進めるということを心がけて練習していけば、誰でも必ず身に着けることができるようになります。

『解法の手順』(PDFファイル)

 それでは、『解法の手順』を見ながら、次の【例題】を解いてみましょう。問題を解いたら、『解法の手順』の使い方を説明した〔例題の問題と解答・解説〕も必ず見てください。

【問題】

てこ1

重さ120gで長さが60cmの均質で一様な棒があります。右の図のように、この棒の左はしから10cmのところをばねばかりで支え、80gのおもりを棒の左はしに,40gのおもりを棒の右はしから15cmのところにつり下げ、棒の右はしを指でつまんで水平につりあわせました。

 (1) ばねばかりは何gを示しますか。

 (2) 棒の右はしを指で支えるのに必要な力は何gですか。

 (3) 棒の右はしを指で支えている力の向きは上か下のどちらですか。


〔例題の問題と解答・解説〕

 今回は、単に答えを求めることが目的ではなく『解法の手順』を身に着けることが目的です。『解法の手順』をどのように当てはめて問題を解き進めていくかについて、この後にできるだけ詳しく説明しますので、必要に応じて『解法の手順』と〔例題の問題と解答・解説〕も参照しながらお読みください。

てこの問題を解くときには、最初に必ず解法図をかきます。解法図は、てこにはたらく力を図示してつりあいの式を立てるためにかくものです。問題の図をそのまま写すのではなく、解説に示したように見やすく整理してかきましょう。『解法の手順』に習熟するには、解法図をかく練習をしっかり行うことが大切です。

② 解法図には、てこにはたらく力をすべて矢印で書き入れます。特に、棒に重さがある場合は棒の重さを忘れるミスを防ぐため、最初に棒の重さをかき入れる習慣をつけることが大切です。

③ 「なぜ棒の右はしにかかる力の向きを適当に定めてよいの?」と疑問に思われたでしょう。支点とはてこを支える点であると同時に、力を加えても位置が変わらない点です。したがって、モーメントのつりあいを考えるときは、支点に加えた力を無視することができるのです。

④ てこのつりあいを考える上で最も重要なポイントになるのが支点の決め方です。「支点さえ決まれば、てこの問題は確実に解ける」と言っても過言ではありません。つりあっているてこには“どこを支点に決めてもつりあいは変わらない”という性質があるので、計算しやすい(できる)位置を自由に支点と定めてよいのです。(1)のような力の大きさを求める問題では、大きさのわからない力が2つある(この問題では、ばねばかりと棒の右はし)ので、一方(棒の右はし)を支点に決めれば、必ずもう一方(ばねばかりで支える力)を求めることができるのです。

⑤ 解法図を完成させるときの最後のポイントが距離の記入です。モーメントのつりあいの式を立てるには支点からの距離が必要ですから、先に支点を決めた上で支点からの距離を書き入れるようにします。

 今回ご紹介した『解法の手順』を、私は“作法”として生徒に教えてきました。「この解法を厳格に守って問題を解き続けることで、必ず『解法の手順』は身に着く。最初のうちは1つ1つ照らし合わせながら解くので面倒に思うだろうが、いずれは無意識で手順を追えるようになり、気がつけば正解にたどり着いているだろう。本番の入試ではひらめきが必要な問題も多いが、この解法を身に着ければひらめきはいらない。普段通りにやるだけで必ず正解にたどり着ける。」と私は言い続けてきました。とても長くなりましたが、これを読んでくださった皆さんにも、ぜひこの解法を身に着けてもらいたいと願っています。

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てこのつりあいの解法(その2) へ続く  2022/02/10 新規公開


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