中学入試の合否を左右する理科。このサイトでは、中学受験における理科のプロ講師が、理科の計算問題の解法と勉強方法, 暗記の勉強法とその対処法などをわかりやすく解説します。理科の豆知識では、受験に役立つ理科のトリビアを紹介します。
フェーン現象の計算問題
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〔2018/08/27 改訂〕
2018年7月23日、埼玉県熊谷市で41.1℃という最高気温が記録されました。これは、高知県四万十市で記録された41.0℃を5年ぶりに更新して、日本最高気温の新記録となりました。
このように、最近は毎年夏になるとあちこちで異常高温の記録が更新されていきます。その際には、必ずと言っていいほどフェーン現象が起こったことが原因と言われています。そこで今回は、中学入試でもよく出題されるフェーン現象の計算問題について説明しましょう。
【問題】
右の図のように、ある山のふもとのA地点(気温26℃,湿度75%)に湿った空気がぶつかって上昇するとき、標高XmのB地点で雲が生じました。その後、山頂Cをこえると雲は消え、山の反対側にあるD地点に吹き下ろします。これについて、あとの問いに答えなさい。ただし、答えが割り切れない場合には、小数第1位を四捨五入して整数で答えなさい。
なお、上昇する空気の温度は、雲ができる前は100mにつき1℃下がり、雲ができてからは100mにつき0.5℃下がります。また、必要なら気温と飽和水蒸気量の関係をまとめた次の表を使いなさい。
(1) B地点の湿度は何%ですか。また、B地点の気温は何℃ですか。
(2) B地点の標高は何mですか。
(3) 山頂Cの気温は何℃ですか。
(4) D地点の気温は何℃ですか。また、D地点の湿度は何%ですか。
【お詫び】長期にわたってPDFのリンクが誤っておりましたが、修正をいたしました。ご迷惑をおかけしまして申し訳ございませんでした。(2020/09/08 記)
【ヒント】今回のフェーン現象の計算問題を理解するには、次の2つの知識が必要です。
1つ目は、“フェーン現象とは何か”ということです。多量の水蒸気を含んだ空気が山の斜面に沿って上昇すると、温度が下がって雲が生じます。雲から雨(寒いときは雪)が降ることによって空気中の水蒸気が減るので、山をこえて吹き下ろす空気は温度が高くなって乾燥するというのがフェーン現象です。
2つ目は、雲は空気中の水蒸気が凝結(液化)して小さな水滴になったものなので、雲の中では常に湿度が100%であるという知識です。
今回ご紹介した問題は、確かに計算問題です。しかし、1つ1つの計算は単純なものばかりであるにもかかわらず、こうした問題を苦手としている生徒は少なくありません。
それはなぜでしょうか?
中学入試の計算問題というのは、極言すれば“知識の集大成”とも言えます。今回の計算問題もその一例です。どのような“流れ”で解くかを判断するためには、その問題で扱われている知識をしっかりと理解しておく必要があるのです。 この問題なら、【ヒント】に挙げた2つの知識がそれに当たります。 これは、理科の計算問題だけに限った話ではなく、算数でも同様ではないでしょうか。
理科は単なる暗記科目ではありませんが、“暗記している知識の量”が得点を大きく左右する科目であることも事実です。レベルの高い問題ほど、解答するには豊富な知識が必要になるのです。そして、多くの知識を身に着けるためには、個々の知識を有機的につないで“理解”していく能力が必要となるのです。
その知識の礎となるものが“基礎知識”です。基礎知識は必ずしも簡単とは限りませんが、その多くは平易な知識です。つまり、努力して暗記をしっかりと行えば、知識問題も計算問題も解けるようになり、必ず理科の得点力が高まるのです。
そして、勉強を進めていく上でもう1つ大切なものがあります。それは“好奇心”あるいは“探求心”です。【解説】の最後の3ページ目に、問題の解答には直接関係しない知識を紹介しましたが、読み飛ばしたりただ読んだだけで済まさず、きちんと理解していただけましたか? あの解説をしっかり読むかどうかは、「もっと知りたい」と思うのか、「問題の答えはわかったからもういいや」と思うのかという小さな差に過ぎません。限られた時間を少しでも効率よく勉強するためにムダな時間を使いたくないと思うのでしょう。しかし、そのわずかな時間をムダと切り捨てずに行動を積み重ねることこそが、豊富な知識を身に着ける源泉となるのです。
「小さな手間を惜しまない姿勢」を持つことが、必ず自らの助けになるのです。
今回の「フェーン現象の計算問題」に関連して、次の2つの記事も参考になさってください。
☆☆★★ なぜ雲は落ちてこない? ~雲の正体とでき方の科学~
雲の正体は何か、なぜ雲は落ちてこないのか、そして雲はどのようにして生じるのか。これらの疑問に答えます。
☆★★★ 雲のでき方とエアコンの深い関係?
「フェーン現象の計算問題」にも出てくる"上昇する空気の温度の下がり方"は、なぜ雲の有無によってちがうのか、そして最近の入試でよく見られる「エアコンのしくみ」について、詳しく解き明かします。