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スラスラ解ける浮力計算の解法

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〔2018/11/18 改訂〕

ルミナス神戸2

 浮力の計算問題を苦手とする受験生はかなりいると思いますが、実は浮力の計算問題はそれほど難しいわけではありません。もちろん、一部の難関校の入試問題には難問もありますが、たいていの中学入試の浮力の問題は、わずか3つのことを理解していれば、容易に正答が導き出せるのです。そこで今回は、浮力の計算問題がスラスラ解けるとっておきの解法を伝授しましょう。本題に入る前に、浮力と重力に関する基礎を確認しておきましょう。

 浮力とは、水中や空気中などにある物体にはたらく上向きの力のことです。水面に船が浮いたり空気中に風船が浮いたりするとき、物体には必ず浮力という上向きの力がはたらくのです。 一方、重力(重さ)とは、地球上にある物体にはたらく下向きの力のことです。地球上のすべての物体は常に地球の中心に向かって真下に引っ張られています。このとき物体にはたらく力が重力(重さ)です。物体にはたらく重力は、物体が水中や空気中にあっても減ったりなくなったりするわけではありません。このことを忘れないでいてくださいね。

それでは、浮力の問題の考え方の極意をお教えしましょう。

(1) 浮力の問題は“上下方向の力のつりあい”に注目して解く。 浮力01

 パターン1は、液体中に完全に沈んでいる物体を糸で支えているときのようすを示しています。この状態では、物体の重さ>物体にはたらく浮力となっています。これは、糸を切れば物体が沈んでいってしまうことからすぐにわかりますね。つまり、図のように物体を液体中で支えるためには、糸(ばねばかり)で物体を上向きに引っ張る必要があるわけです。このように、この物体には3つの力がはたらいており、重力=浮力+張力という関係が成り立ちます。

 一方、パターン2は、船が浮くように物体が一部を液面上に出して浮いているときのようすを示しています。このとき、物体はこれ以上浮きも沈みもせずにじっと静止しています。つまり、この物体には重力と浮力の2つの力しかはたらいていないので、重力=浮力という関係が成り立っているのです。なお、パターン2には、右側の図のように、物体が液体中で浮きも沈みもせずにじっとしている場合(例えば、潜水艦が水中にとどまっている状態)であっても、同じ関係が成り立ちます。

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 このように、浮力の問題はこの2つのパターンのどちらかで考えられます。したがって、浮力の問題を解くときは、まず最初にどちらのパターンかを見抜くのです。そうして、上の図で示した上下方向の力のつりあいの図をかきさえすれば、正解にぐんと近づくことができるのです。もちろん、難関校で出題される浮力の問題には、“4つの力のつりあいを考えさせる”といった問題も出てきますが、上下方向の力のつりあいに着目するという基本的な考え方には何らちがいはありません。

(2) 『アルキメデスの原理』の公式 浮力の公式

 アルキメデスの原理とは、物体にはたらく浮力は、その物体がおしのけた液体の重さと等しいというものです。上の公式は、そのことをそのまま表現したものです。この式の右辺(=の右側)にある「物体の液体中の体積」とは“その物体がおしのけた液体の体積”のことです。その体積と「液体1cm3あたりの重さ」をかけ合わせれば“物体がおしのけた液体の重さ”になるわけです。このとき、特に注意しなければならないことは、太字で強調した体積重さという2つの言葉のちがいです。この体積重さという言葉を決して混同しないでください。

 なお、「液体1cm3あたりの重さ」とは、その液体の密度のことです。密度を計算する式は、密度=重さ(g)÷体積(cm3) なので、密度は「g/cm3」という単位で表されます。また、密度の値(数値)は比重とも言います。その意味は、「同じ体積の水と比べた重さが何倍になっているか」ということなので、公式を使うときには密度=比重と考えて差し支えありません。

(3) 台ばかりの示す重さは「浮力分だけ増える」

 台ばかりの示す重さを問う設問は、浮力の基本問題でもよく出題されます。そんなときに使うのが、この3つ目の知識です。では、なぜ浮力分だけ増えるのかを、次のような簡単な例え話で考えてみましょう。

 今、この説明を読んでいるあなたが300gの液体とします。この液体は、水でも食塩水でもかまいません。そして、あなたは重さ100gのビーカーに入れられて、台ばかりの上にのせられています。このとき、台ばかりが示す重さは400gです。そこへ、あなた(液体)の上から糸につるされたおもりが降りてきました。おもりは液体であるあなたに突っ込んでくるので、あなたは「押すなよ!」とおもりを上へおし返そうとするでしょう。

 そうです! そのときに液体であるあなたが“おもりをおし返す力”こそ浮力の正体なのです。もし、あなたが押し返す力が50gなら、台ばかりの示す大きさは50gだけ増えるはずですね。つまり、“台ばかりの示す重さは浮力分だけ増える”というわけです。


 それでは、この3つの知識を使って、実際の問題を解いてみましょう。


〔浮力の計算問題〕の問題・解答PDF

 さて、3つの知識をうまく使って問題は解けましたか?

 さて、理科の計算問題で公式を使うとき、心がけておくとよいことが1つあります。それは、『公式は“変形せずに”そのままの形で使う』ということです。今回の場合なら、解法図に力の矢印をかきこんだら、アルキメデスの原理の公式をそのまま、図の中にかき入れるのです。この方法の最大のメリットは、割る数と割られる数を逆にして計算するミスを防げるということです。もちろん、虫食い算で答えを出すことになりますが、いつでも公式をそのままの形で使うことは思考の過程を単純化することにつながります。この方法は他のさまざまな問題の解法にも応用できることなので、ぜひ身に着けておきましょう。

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