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溶解度の計算問題(基本編)

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〔2018/12/9 改訂〕

 溶解度の計算問題は、理科の計算問題の根幹とも言える最も重要な要素を含むものです。理科計算の根幹というのは“比例計算”のことです。2つの量の間に比例関係が成立する計算問題は、最も単純かつ最も頻出する理科計算の黄金パターンと言ってもいいでしょう。その関係は極めて 錐計 シンプルです。以下に、簡単な例を挙げてみましょう。


問題1 1個150円のリンゴがあります。

(1) リンゴを3個買うにはいくら必要ですか。 

(2) 600円はらうと、リンゴは何個買えますか。

(3) 800円持ってリンゴを買えるだけ買ったとき、お金はいくら残りますか。


問題2 60℃の水100gには、ほう酸が15gまでとけます。

(1) 水300gには、何gまでほう酸をとかすことができますか。

(2) 60gのほう酸をすべてとかすには、60℃の水が少なくとも何g必要ですか。

(3) 60℃の水500gに80gのほう酸を入れてかき混ぜると、何gのほう酸がとけ残りますか。


 問題1は、改めて正答を挙げる必要もないほど平易な問題ですね。(1)は450円,(2)は4個,(3)は50円(→リンゴは5個買える)です。この問題の基本になっているのが“比例”という考え方ですが、そんな難しいことを言わなくてもお子様は感覚だけで自然に解けるでしょう。

 問題2は、少し強引ですが、リンゴを水に,お金をほう酸に置き換えてみました。答えは、(1) 45g ,(2) 60g ,(3) 75g となります。(解説は後掲のPDFファイルをご参照ください。)

 問題1の考え方は、改めて教えるようなものではないですね。問題文を読み取り、2量の関係を明らかにすれば簡単に解けるでしょう。しかし、問題1はスラスラ解けても、問題2になるとそうはいかないお子様もおられます。いったいその違いはどこからくるのでしょうか。

 それは『イメージ』です。問題1のような問題の設定なら、お子様にとっては極めてリアルに状況をイメージすることができると思います。自分の財布には800円入っていて、1個150円のリンゴを4個買えば600円支払うので財布には200円残ること、その200円でリンゴをあと1個買うと、お財布の中には50円だけ残ることを、はっきりと想像することができるはずです。

 しかし、問題2になった途端に状況は一変します。リンゴの問題のようにリアルなイメージがうまくできないために、問題2がスラスラと解けなくなるお子様がたくさん出てくるのです。 それではどうすればいいのでしょうか。やみ雲に多くの問題を解くだけでは解決になりません。そうではなく、比較的やさしい問題を使って問題のイメージを掴む練習をすることに専念する方が得策なのです。リンゴの問題でリンゴの個数とお金が比例するように、溶解度の計算問題では水量と物質がとける量が比例するということをしっかりと意識して演習を行うことが大切です。


 ところで、溶解度の計算問題では、強く意識しておかなければならない重要なことがもう1つあります。それは、“温度は計算しない(できない)”ということです。水温(液の温度)はグラフや表から読み取るものであって、計算するものではありません。つまり、温度を問う問題では必ず溶解度の表またはグラフを読み取ることになるのです。したがって「水100gあたりに何gの物質がとけることになるか」を計算することが問題を解く基本的手順になるのであって、温度の数値が計算式に入りこむことは“絶対にあり得ない”ということを覚えておいてください。


 それでは、基本的な入試問題をさらに2つご紹介しましょう。まず、1題目です。

問題3 80℃の水200gに40gのほう酸をとかしたほう酸水があります。このほう酸水の温度を60℃に下げると、何gのほう酸がとけきれなくなって出てきますか。


ドリンク

 溶解度の計算問題の『解法の手順』として、いつも意識しておかなければならないことが2つあります。

  ① 常に水100gのときのことを考える

  ② 最初と最後の差を考える

 問題3の場合、“最初”にとけているほう酸の量は40gで、“最後”にとけているほう酸の量は60℃の水200gにとける最大量です。つまり問題3は「60℃の水200gにとける最大量」を計算した上で、“最初”にとかした40gからその量を引けば求められるわけです。「だったら最初から問題にそう書いてくれればわかりやすいのに」という声が聞こえてきそうですね。逆に言えば、溶解度の問題を解くには、問題文をよく読んで出題者が何を計算させようとしているのかを読み解く(翻訳する)必要があるということです。そうした能力を磨くことによって、難しそうな問題もスラスラと解きこなすことができるようになるわけです。

 なお、この問題には「80℃の水100gにとけるほう酸の重さ」がどこにも書いてありません。その数値が計算には不要なので、あえて書いていないだけです。しかし、ほとんどの入試問題には溶解度の表やグラフが与えられているので、よくわかっていないお子様の中には“最初”の量を「80℃の水200gにとけるほう酸の重さ」だと誤解してしまうのです。

 溶解度の計算問題に限らず、お子様が問題を解けない根本的な原因の1つに状況把握ができていないということがあります。計算問題の解法をマスターするには題意を正確に読み取る必要があります。問題の意味をしっかり理解して何をするべきかということを納得することを意識して類題演習に取り組むことを心がけなければ、いくら多くの類題演習を行っても正しい解法は身に着かないということです。


それでは、基本編の最後の計算問題をご紹介しましょう。


問題4 水100gにとける物質Xの重さは、40℃で12g,60℃で24g,80℃で42gとします。

(1) 80℃の水200gに物質Xをとけるだけとかしたあと、液の温度を60℃に下げると何gの物質Xがとけきれなくなって出てきますか。

(2) 40℃の水87.5gに物質Xをとけるだけとかしたあと、液の温度を60℃に上げるとさらに何gの物質Xをとかせるようになりますか。


ガラス器具

 この問題4は、一見すると問題3と同様に「最初と最後の差」に着目すれば求められると思われることでしょう。例えば(1)は、80℃の水200gには42g×2=84gとけて、60℃の水200gには24g×2=48gとけます。したがって、とけきれなくなって出てくる量は、84g-48g=36g と求めるお子様がほとんどです。

 では、同じ考え方で(2)を解いてみてください。水量が100gの0.875倍なので面倒なかけ算を2度もやらねばならず、非常に効率が悪い解き方であるということに気付かれることでしょう。それでは、どのように考え、どのように解けばよいのでしょうか。

 溶解度の計算問題の「解法の手順」では、常に水100gのときのことを考えることが鉄則ですから、その通りにやってみましょう。まず、水量が100gのときにとけきれなくなって出てくるほう酸の量は、42g-24g=12gです。実際の水量は87.5gで100gの7/8倍(8分の7倍)ですから、12g×7/8=10.5g と面倒なかけ算を1回するだけで答えが出せるのです。

 中堅校までの入試問題なら、問題4でご紹介した解法を使えなくても極端に困る場面は少ないでしょう。しかし、上位校を狙う受験生にとっては解答時間を短縮するために必須の解法です。ぜひ、この機会に練習してみてください。

☆ 今回ご紹介した問題と解答・解説を見やすくまとめたPDFファイルをご用意いたしました。印刷も可能ですのでお使いください。

〔溶解度の計算問題(基本編)〕の問題・解答PDF

※ 次回は「溶解度の計算問題(発展編)」を取り上げる予定です。

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