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月の動きに関する3つの計算

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〔2018/11/18 改訂〕

どのような計算問題でもあらかじめ理解しておかねばならない知識があります。

 これまでいくつかのテーマで計算問題の解法を説明してきましたが、計算問題に限らず、天体の問題を苦手としているお子様は多くおられます。その理由はいくつかありますが、中でも多いのが『そもそもの原理がわからない』というものです。天体の単元ではそうした声がよく聞かれますが、その大きな原因の1つは“覚えておかねばならない知識が図であることが多い”からではないでしょうか。

 天体の問題では、正確な知識を図とともに理解することが大切であるということを実感していただくために、今回は月の動きに関する3つの代表的な計算を用意しました。いずれも受験生にとっては難解に見える計算ばかりですが、ぜひ挑戦してみてください。なお、答えはすべて割り切れませんので、小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めてください。


【問題】

(1) 1年の長さを360日,月の満ち欠けの周期を30日として、月の公転周期を求めなさい。

(2) 1年の長さを360日,月の公転周期を27日として、月の満ち欠けの周期を求めなさい。

(3) 月の公転周期を27日,月の満ち欠けの周期を30日とすると、月が南中する時刻は毎日平均して約何分ずつおくれていきますか。


【解法のヒント】どの問題も難しそうに見えるはずなので、ヒントを出しておきましょう。

月の動き

 (1)と(2)は、どちらも右のような図を使って考えます。また、1年の長さを360日とすることにより、地球が1日あたりに公転する角度は、360度÷360日=1度 と考えることができるようになります。(3)は、「月の南中時刻は毎日約50分ずつおくれる」という知識を使います。満月から次の満月になるまでの間に南中時刻のずれの合計が1日分(=1440分)になるわけですが、満月の前後に見られる月の南中時刻の移り変わりに注目することがポイントです。


〔月の動きの計算問題〕の問題・解答PDF

満月のクレーター

 3つの計算問題はうまく解けたでしょうか? 計算問題を解く上で最も大切なことは、「その問題を解くためには必要な“基礎的な知識”を理解しておく」ということです。これは天体に限らず、どんな計算問題にもあてはまることです。計算問題では数字を計算して答えを求めるのは当然ですが、答えにたどりつくために必要不可欠なことは、“思考の過程をはっきりと意識する”ことなのです。

 例えば、(1)や(2)を解くためには【解法のヒント】で示したような図をかくことが必要です。しかも、単なる丸覚えではなく、その図が何を説明しているのかを理解しておくことが重要なのです。(3)も、「月の南中時刻は毎日約50分ずつおくれる」ということは誰でも知っていることですが、そのずれが積み上がっていくと「月が南中しない日が現れる」という“ささいなこと”にはなかなか気付きません。こうした“ささいなこと”を気にかけたり注意を向けたりできる能力を養う意識を持つことが、実は理科の勉強を進める上でとても重要になってくるのです。


 名探偵のコナン君が推理を組み立てるとき、彼は「みんなが見ていることの中に埋もれている事実を、“自ら意識して視点を定めて”見ています。「これがここにあるということは、きっとこうなるはずだ!」というコナン君の心の声はよく耳にしますね。ものごとには“道理”(因果関係)があります。コナン君はそうした“道理”にかなった思考を常に意識しているからこそ、みんなが見落としがちな事実に気付けるわけです。理科の計算問題を解くのも似たようなものです。計算問題を解くことはものごとの“道理”を数字を交えながらたどることに他なりません。理科の勉強をするときは、何らかの“気づき”を求めながら進めることが大切なのです。いつも好奇心を持って「なぜ?」,「どうして?」,「もしそうなら、これはどうなるんだろう?」という問いを自分で立てながら勉強をしていけば、いつかきっと自分の血肉となる活きた知識となることでしょう。



【参考までに】

 最後に今回の例題に関連して、理科便覧等に載っている正確なデータをご紹介しておきます。

  月の公転周期………27.321日   1年の長さ……365.242日

  満ち欠けの周期……29.530日   月の南中時刻のずれ……50.47分

 今回の例題は計算を楽にするためにあえて整数で簡単な数値設定をしましたが、上記の数値を使えば正確な値が計算で求められますので、ぜひ使ってみてください。その計算を示した解説も用意しましたので、興味があればご覧ください。もし自分で計算して確かめたいときは、電卓を使って構いません(こんな計算を筆算でさせるような入試問題を出す中学校はありませんから)。もちろん計算力に自信があるなら、手計算で解いてみてもいいですね。カッコいいと思いますよ(^^)v

※ (3)の計算問題では、多くの塾の先生が「正確に計算すると48分だから、月の南中時刻のずれは毎日約50分なんだ」という説明をしますが、それは明らかに誤りです。多くの問題集にも、「1440分÷30日=48分」という解説式をよく見かけますが、これはあくまで概算のレベルです(→1440分÷29.53=48.76…となり、50.47分という値にはならないのがその証拠です)。 問題そのものが、そういう設定で考えさせるものがほとんどですが、あくまでも概算であることを覚えておきましょう。

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