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溶解度の計算問題(発展編)

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〔2018/12/10 改訂〕

 前回の基本編に引き続き、今回は発展編としてもう少しレベルの高い問題にトライしていこうと思います。前回の基本編では「常に水100gのときのことを考える」という鉄則を確認しました。今回もこの鉄則をきちんと使って問題を解いてください。

問題5 ある物質Xが水にとける最大量は、40℃のときが24g,60℃のときが40gです。

(1) 60℃のほう和水溶液700gにとけている物質Xは何gですか。

(2) 60℃のほう和水溶液210gの温度を40℃に下げると、何gの物質Xがとけきれなくなって出てきますか。


【ヒント】「水100gのときのことを考える」という鉄則を守って考えていきましょう。(本サイト上では分数を見やすく表記できませんので/を用いた簡便法で表記いたします。)

(1) 60℃の水100gに物質Xは40gまでとけるので、このときできるほう和水溶液の重さは、100g+40g=140g となります。つまり、ほう和水溶液の重さは、700g÷140g=5(倍)なので、とけている物質Xの重さも5倍になります。

試験管

(2) (1)と同様に考えます。60℃の水100gに物質Xは40gまでとけるので、このときできるほう和水溶液の重さは 100g+40g=140g です。一方、液温を60℃から40℃まで下げたときにとけきれなくなって出てくる物質Xの重さは 40g-24g=16g です。つまり、ほう和水溶液の重さは 210g÷140g=3/2倍(2分の3倍)なので、とけきれなくなって出てくる物質Xの重さも3/2倍になります。


それでは、ほう和水溶液に関する問題にもう少し取り組んでみましょう。

問題6 ある物質Xが水にとける最大量は、20℃が25g,60℃が40g,80℃が75gとします。

(1) 物質Xの20℃のほう和水溶液400gの中には、何gの物質Xがとけていますか。

(2) 物質Xの20℃のほう和水溶液400gのこさは何%ですか。

(3) 物質Xの60℃のほう和水溶液400gを加熱して25gの水を蒸発させると、何gの物質Xがとけきれなくなって出てきますか。

(4) 物質Xの60℃のほう和水溶液400gの温度を80℃にすると、さらに何gの物質Xをとかせるようになりますか。

(5) 物質Xの80℃のほう和水溶液315gの温度を40℃まで下げたところ、81gの物質Xがとけきれなくなって出てきました。このことから、40℃の水100gには最大で何gの物質Xをとかすことができますか。


【ヒント】

(1) 20℃の水100gにとける物質Xは25gなので、このほう和水溶液の重さは125gになります。つまり、ほう和水溶液の重さが 400g÷125g=400/125(125分の400)倍=16/5(5分の16)倍になっているので、とけている物質Xの重さも25gの16/5(5分の16)倍になると考えます。

(2) ほう和水溶液のこさは、温度が決まれば水溶液の重さに関係なく常に一定です。この問題のように、400gのほう和水溶液にとけている物質Xの重さや水溶液に含まれている水の量を求める必要はなく、水100gに何gまでとけるか(溶解度)さえわかれば簡単に計算することができます。

試験管とフラスコ

(3) ほう和水溶液から水を蒸発させると、その水にとけていた物質がとけきれなくなって出てきます。この設問では60℃の水25gにとけていた物質Xが出てきます。

(4) 60℃の水100gにとける物質Xは40gなので、このほう和水溶液の重さは140gになります。そして、このほう和水溶液の液温を80℃にすると物質Xは75gまでとけるので、さらにとかせる物質Xの重さは 75g-40g=35g となります。いま、ほう和水溶液の重さが 400g÷140g=400/140(140分の400)倍=20/7(7分の20)倍 になっているので、とけている物質Xの重さも35gの20/7(7分の20)倍になると考えます。

 ※ 計算のテクニック……途中式では小数を使わずに分数を使うと楽に計算ができます。

(5) 80℃の水100gにとける物質Xは75gなので、このほう和水溶液の重さは175gになります。40℃の水100gにとける物質Xの最大の重さを□gとすると、このほう和水溶液の温度を40℃まで下げると(75-□)gの物質Xが出てくることになります。したがって、ほう和水溶液の重さが 315g÷175g=315/175(175分の315)倍=9/5(5分の9)倍になっているので、とけている物質Xの重さも (75-□)g×9/5=81g になると考え、これを計算して□gを求めます。

☆ 今回ご紹介した問題と解答・解説を見やすくまとめたPDFファイルをご用意いたしました。印刷も可能ですのでお使いください。

〔溶解度の計算問題(発展編)〕の問題・解答PDF

 さて、問題6についてもう少し深く掘り下げてみましょう。今回の問題の中で純粋に計算問題と言えるのは、(1),(4),(5)の3問だけです。いずれも最初に水100gのときのことを考えることから始め、最初と最後の差に着目し、計算の元になるほう和水溶液の重さと物質Xの量との関係を導いた上で、設問の条件に合わせて答えを求める、という流れで解き進めていくのです。このような視点から例題の解法を改めて俯瞰してみると、これらの設問が同じような考え方で成り立っていることが理解していただけると思います。

 実は、例題6の最も重要ポイントは、(2)と(3)をどのように考えるかという点にあります。例えばお子様が(2)を解くとき、(1)の流れのままに400gのほう和水溶液に80gの物質Xがとけていることを使って答えを出していませんか? もしかしたら水の重さが320gであることまで求めているかもしれません。もちろん正解は出るのですが、よい解法とも言えません。

青い水滴

 詳しく説明しましょう。(2)の設問で、ほう和液の重さを400gではなく123gとしてお子様に解かせてください。きっとお子様は123gのほう和水溶液にとけている物質Xの重さを求めようとするでしょう。ただし、今度は簡単には簡単な数字にはなりませんが。先に種を明かせば、答えは元の問題と同じ20%になります。なぜなら、液の量が123gでも400gでも、40℃の水100gあたり25gの物質Xがとけていることに変わりはないからです。

 これが、ほう和水溶液のこさが、温度が決まれば水溶液の重さに関係なく常に一定となる理由です。そもそも水溶液のこさは、水溶液の重さを100としたときに、とけている物質の重さがいくらになるかを表す割合ですから、同じ割合で作られた水溶液があれば必ずこさも同じになるのは当然です。この設問は、この基本的な知識の理解が試されているというわけです。

 (3)も同様です。この設問でも、最初のほう和水溶液の重さ(400g)は計算には無関係です。この設問を解く鍵になるポイントは、「蒸発させた60℃の水25gにとけていた物質Xがとけきれなくなって出てくる」という“知識”なのです。


 理科に限った話ではないですが、優れた問題には必ず出題者の意図がこめられています。その意図を正しく受け止めて身に着けることによって、さらに高い次元の問題へ挑むための礎とすることができます。出題の意図を理解することを心がけた勉強さえ行えば、大量の類似パターンの問題を解くような勉強をしなくても問題を解く力は確実に身に着けることができるのです。


〔溶解度の計算問題(発展編)〕の問題・解答PDF

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