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(4) 日本の宇宙探査に関する問題

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〔2018/12/15〕

 これまで日本は数々の重要な宇宙探査ミッション(任務)を成功させてきました。例えば、世界初のハイビジョンカメラを搭載した月探査機「かぐや」を打ち上げ、多数の高精細な月面の画像を撮影しました。その画像は研究者のみならず世界中の人々を魅了しました。また、太陽系誕生の秘密を解き明かす使命を帯びた無人探査機を小惑星に向けて打ち上げました。この無人探査機は、目的とする地球外の天体に自律航法(※)で接近・着陸して、その天体の試料を劣化させずに地球に持ち帰る(サンプルリターン)という、これまでどの国も成し遂げられなかった偉業を世界で初めて成功させ、この計画に携わった日本の研究者たちは世界中から驚きと賞賛の声を集めました。(※自律航法…地球からの指令ではなく、探査機が自分で航路を決める航法) 

 そして2108年10月、2機目の無人小惑星探査機が初号機と別の新たな小惑星に到着しました。現在は小惑星のまわりを周回しながら、安全に着陸してサンプルを採取するというミッションを確実に成功させるために必要なさまざまな調査・探査を始めています。

 そこで今回は、こうした日本の宇宙探査に関する問題を取り上げましょう。


【問題】

問題1 日本の宇宙開発と国際宇宙ステーションについて、次の問いに答えなさい。

(1) 宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまでを一貫して行う日本の宇宙機関(宇宙航空研究開発機構)の略称をアルファベット4文字で答えなさい。

(2) 国際宇宙ステーションの略称をアルファベットで答えなさい。

国際宇宙ステーション

(3) 国際宇宙ステーションにある日本の実験棟(上の写真の矢印の部分)の名まえをひらがなで答えなさい。

(4) 国際宇宙ステーションが地球を1周するのにかかる時間は約何時間ですか。小数第1位までの概数で答えなさい。

(5) 国際宇宙ステーションのおよその飛行高度を次のア~オから選び、記号で答えなさい。

 ア.4km   イ.40km   ウ.400km   エ.4000km   オ.40000km

(6) (5)から考えて、国際宇宙ステーションにある直径が50cmほどの丸い窓から地球を見るとどのように見えますか。正しいものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。

 ア.窓わくから大きくはみ出た、巨大な地球のごく一部だけが見える。

 イ.窓わくのふちにそうように直径40cmほどの丸い地球が見える。

 ウ.窓の中にソフトボールくらいの大きさの地球が見える。

 エ.窓の中にピンポン球くらいの大きさの地球が見える。

(7) 2017年12月末から2018年6月までの約半年間にわたって国際宇宙ステーションに滞在した日本人宇宙飛行士の名前を答えなさい。

(8) (7)で答えた宇宙飛行士は、日本人宇宙飛行士として何人目に宇宙に行ったことになりますか。ただし、1人で何回行っていても1人と数えるものとします。


はやぶさ2

問題2 2018年夏、日本の小惑星探査機が目的の小惑星に到着して探査の準備を始めました。これについて、次の問いに答えなさい。

(1) この小惑星探査機の名前を答えなさい。

(2) (1)の小惑星探査機が目指した小惑星の名前を、カタカナ5文字で答えなさい。

(3) (2)の小惑星の位置として正しいものを1つ選び、記号で答えなさい。

 ア.太陽と地球の軌道の間   イ.地球と火星の軌道の間   ウ.火星と木星の軌道の間

 エ.木星や土星のまわり    オ.海王星の外側

(4) (2)の小惑星について正しいものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。

 ア.数十億年前に太陽系ができたときに、惑星になれなかった粒子が固まったもの。

 イ.数十億年にわたって太陽系外から飛来したいん石などが軌道を回るようになったもの。

 ウ.かつては太陽系の惑星だったものが、他の天体の重力の影響でくだけてしまったもの。

 エ.かつてはガス惑星だったものが、まわりにあった気体がふき飛ばされて中心の固体だけが残ったもの。

(5) (1)の小惑星探査機は、②の小惑星の表面ではなく内部にある粒子を採取することになっていますが、なぜ内部にある粒子が必要なのですか。小惑星には水も大気もないことから考えて、その理由を簡単に答えなさい。


はやぶさ2の打ち上げ

 日本の宇宙探査は非常に少ない予算で行われているにもかかわらず、その技術力やアイデアには海外からも一目置かれています。例えば、 例えば、2018年12月に小惑星ベンヌに到着して、そこから試料を持ち帰る予定のNASA(アメリカ航空宇宙局)の無人小惑星探査機オシリス・レックスには、はやぶさ計画で培った日本のサンプルリターン技術が採用されているほどなのです。

 今回ご紹介した日本の宇宙探査に関連する問題は、その成果が発表されるのが2019年になるものが中心ですから、2019年春の入試には出題されないかもしれません。しかし、念のために基本だけはおさえておいてもいいのではないでしょうか。それでは、最後に解答例と簡単な解説を挙げておきます。


【解答例】

問題1 (1) JAXA  (2) ISS  (3) きぼう  (4) 1.5時間  (5) ウ 

    (6) ア  (7) 金井宣茂(かないのりしげ)  (8) 12人目

問題2 (1) はやぶさ2  (2) リュウグウ  (3) イ  (4) ア

    (5) 小惑星の内部にある宇宙線をあびていない試料が必要だから。(同意可)


【解説】

問題1

(1) いずれも基本的な知識なので、きちんと覚えておこう。

(2) JAXAは「ジャクサ」と読む。

ISSから見た地球

(4)(6) ISSの飛行高度は約400kmで、高度36000kmの静止軌道(周期は24時間)と比べてとても低い。そのため、ISSはたった90分ほどで地球を1周する。また、直径が約12800kmの地球の表面に近い低い軌道を周回するISSからは、右の写真のように、窓わくの中におさまりきらないほど大きな地球が見える。

(7) 金井宣茂さんは、日本人宇宙飛行士として12人目に宇宙に行きました。ちなみに、最も多く宇宙に行っている日本人宇宙飛行士は若田光一さん(4回)で、最も長く宇宙に滞在した日本人(約347日間)です。

問題2

(2) 2014年11月に打ち上げられた「はやぶさ2」は2018年夏に小惑星リュウグウに到着し、現在は2019年に予定しているサンプル採取に向けた着陸地点の調査などを行っています。

(3) 「はやぶさ」が目指したイトカワや「はやぶさ2」が目指したリュウグウは、地球に非常に近い軌道上を動く例外的な小惑星〔地球近傍小惑星(NEA)と呼ばれる〕で、地球に衝突する危険性があるとして詳しい観測対象となっていた小惑星である。ただし、太陽系の小惑星の多くは、火星と木星の軌道の間にある小惑星帯(アステロイドベルト)の中にある。

(4) 多くの小惑星は数十億年前に太陽系ができた当時のままの物質でできているが、地球型惑星になれなかった物質が集まってできたものと考えられている。そのため、小惑星をつくっている物質を調べることによって、太陽系ができる際の謎に迫れることが期待されている。

(5) 小惑星は数十億年にわたって多量の宇宙放射線が当たり続けたことによって組成が変化してしまっている可能性がある。今回の「はやぶさ2」のミッションでは、小惑星リュウグウの表面に硬い球を高速でぶつけて地中の粒子を取り出すことで、宇宙放射線の影響を受けていない試料を持ち帰ることが期待されている。

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