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ミクロの世界をのぞく!(昆虫編)
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〔2018/09/12 改訂〕
前回に引き続き、今回も電子顕微鏡が誘うミクロの世界を紹介をします。今回は昆虫の画像を見ていきましょう。
トップバッターはイエカの口です。この鋭くとがった口のつくりには、痛みはおろか血を吸う相手の動物に刺されたことすら感じさせないという恐るべき特ちょうがあります。このつくりにヒントを得て作られた最新型の注射針が、“痛みを感じさせない魔法の注射針”なのです。
このように、「生物の組成や形状を研究し、その優れた機能を工学技術として応用すること」を“生物模倣(もほう)”といい、皆さんの身近にもいろいろな例があります。最も有名なものは「マジックテープ」です。これはオナモミの実がヒントになって商品化されたものです。また、超高速で走る500系新幹線は、風による大きな音を減らすため、水しぶきをあげずに水中に飛び こむカワセミのくちばしをヒントに先端部はデザインされていたことは有名でしたが、パンタグラフの支柱も音を立てずに飛ぶフクロウの羽根がヒントになって作られていました。 さらに、最近の旅客機のウイングレット(翼の端)は、右の写真のようにピンと上に反り返っています。これは、ワシの翼にヒントを得たつくりで、空気抵抗を減らして揚力を増やし、飛行機の燃費を4~5%も改善する素晴らしい効果を生み出しています。
次はハチの毒針を見てみましょう。カの口と同様に刺すことが目的のつくりです。1枚目はミツバチの毒針です。 小さなミツバチには毒針しか反撃する武器がありません。拡大写真を見るとよくわかりますが、ミツバチの毒針には返しと呼ばれる突起があり、一度刺した針は抜けません。それどころか、毒の入った袋(毒のう)ごと出てくるので、刺したミツバチは腹が破れて死んでしまいます。しかし、毒のうは腹から出ても縮み続け、最後の1滴まで相手に毒 を注入し続けるのです。
一方、スズメバチの毒針は何度も相手を刺せるようになっています。毒針は相手を攻撃するために必要なので、刺した針が簡単に抜けては困ります。そのため、拡大写真を見るとわかるように、針の表面にはとげ(小さな返し)がついています。
最後に紹介するのは、“なめる口”を持つ昆虫の代表例として有名なイエバエの口です。まるで掃除機のように見えますね。口の中を500倍や1000倍に拡大した写真も忘れずに見てください。この網の目のようなつくりがとかした食べ物をなめ取るのに役立っているのです。
【お知らせ】今回ご紹介した写真はすべて「走査型電子顕微鏡画像資料集」というウェブサイトで紹介されているものです。サイトの一番上にあるタイトル名をクリックすると「画像一覧集」というページが開きます。皆さんが何かを勉強するときに、思い出したらぜひ写真を見に行ってみてください。もしかしたら、それがきっかけで新しい知識を覚えることができるようになるかもしれませんね。