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空の青と海の青

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〔2018/09/15 改訂〕

 さて今回は、「空がなぜ青く見えるのか」,「どうして海は青く見えるのか」というテーマについて深く掘り下げてみましょう。まずは、人気アニメの金字塔『名探偵コナン』で怪盗キッドとコナンが言い交わすこのシーンから。

キッド:「海のブルーは空のブルーが映ってんだろ? 探偵や怪盗と一緒さ。」

コナン:「バーロー!空と海の色が青いのは、色の散乱と反射、全く性質が異なる理由によるものだ。一緒にするなよ!その証拠に水たまりは青くねえだろーが。」

キッド:「お前、夢ねーなぁ…」

 これは『怪盗キッドの驚異空中歩行』というエピソードの中の1シーンです。では、コナンの言うことをわかりやすく説明してみましょう。


① 空はなぜ青く見える?

光のスペクトル

 日光を三角プリズムに通すと7色に分かれるように、太陽から地球に届く光は白色に見えても、実際にはさまざまな色の光が含まれています。日光が地球の大気を通るとき、日光は大気中の気体の分子(非常に小さな粒)にぶつかって四方八方へ散らばります。これを光の散乱といいます。

レイリー散乱

 青色の光には赤色の光よりも散乱しやすいという性質があるので、図1のように空のあちこちで青色は散乱される一方で、他の色の光は真っ直ぐ進んでいってしまうのです。そのため、人の目には青色の光ばかりが入ってくるので空は青く見えるのです。


② 青色の光が散乱されやすい理由

散乱の原理

 光の色は波長で決まります。青色の光は波長が短く、赤色の光は波長が長いのです。大気中には、光の波長の1000分の1ほどの大きさしかない、非常に小さな気体の分子(粒)があります。図2のように、日光が大気層に入ると波長の短い青色の光は気体の分子にぶつかって散乱しますが、波長の長い赤色の光は気体の分子にほとんど当たらず、スイスイと通りぬけるように進んでしまうのです。

【発展内容】光がその波長よりもはるかに小さな粒(気体の分子など)にぶつかっておこる散乱をレイリー散乱といいます。また、光の波長と同じくらいの大きさの粒(大気中にある細かいちりや火山灰など)に光がぶつかっておこる散乱をミー散乱といいます。(→専門用語が入試で出ることはありません。)


③ 夕焼け空はなぜ赤いのか?

夕焼けの原理

 図3のように、夕方になると、日光が大気中を通る長さは昼間と比べてはるかに長くなるので、太陽から来る光のうち、青色の光はどんどん散乱して弱まっていきます。そのため、太陽から直接目に届く光はほとんど赤色だけになるので、太陽が真っ赤に見えるようになります。 また、散乱光の多くが赤色の光だけになるので、太陽のまわりの空が赤く見えます。これが夕焼けです。なお、赤い光は直進しやすく、赤い光を反射させるような大きなちりが大気中に多くあるわけでもないので、空が青く見えるように空全体が真っ赤に染め上がって見えるようなことにはなりません。

エジプトの神官

【参考】古代エジプトの占星術師たちは「星や夕陽が赤くなると飢饉(ききん)がおこる」と予言しました。その予言は国王も驚くほどよく当たりました。科学が発達した現在では、地球のどこかで大きな噴火が起こると大気中に大量の火山灰が噴き上げられるので、ミー散乱が強くなって夕焼けや赤い星がより赤く見えることがわかっています。もちろん、昔の占星術師が、“大気中にまき散らされた火山灰が日光を弱めるので作物の実りが悪くなる”ということを知っているはずがありませんが、「凶作の年には赤い星や夕陽がより赤く見える」ことを経験的に知っていたので、正確な“予言”ができたのです。


④ 海はなぜ青く見えるのか?

夕焼けの原理

 今回の最後のテーマとなるこの疑問ですが、意外にもその決定的な理由は十分に解明されておらず、いくつかの説があるのです。その中で、今のところ最も有力と言われているのが“太陽光の散乱説”です。

 図4のように、海面に当たった日光のうち、赤・黄・緑などの色の光は水中を進んでいく間にほとんど吸収されてしまいますが、青色の光だけは散乱を繰り返しながら深い海を進んでいきます。その結果、海中から目に入る光の色は青色だけになってしまうのです。

【参考】海だけでなく、氷でできている氷河も青く見えます。分厚い氷の中を日光が通るときにも氷の中にある水分子によるレイリー散乱がおこるからです。ちなみに、氷河のまわりにある湖が緑色に見えることがあるのは、氷河によってけずられた非常に細かい岩のくず(ミネラル分)によるミー散乱のせいです。

青い氷河 モレーン湖

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