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光電池の不思議なつなぎ方

レベル表示:☆☆★★

〔2018/09/17 改訂〕

 4年生の小学校の教科書には、光電池を使ってモーターを回す実験がのっていますが、実験を行う際の明るさのちがいによって実験結果が大きく変わることは案外知られていません。そこで今回は、光電池の特性について話しましょう。本題にいく前に、いくつかの基本事項を確認しておきます。

(1) かん電池2個をつないだときに流れる電流とモーターの回り方

直列つなぎにすると、モーターに流れる電流が大きくなるのでモーターは速く回る

並列つなぎにすると、モーターに流れる電流は変わらないのでモーターは同じ速さで回る


(2) よく晴れた日に1枚の光電池でモーターを回す場合の電流の大きさとモーターの回り方

光電池とモーター

光電池の真正面から垂直に日光を当てるとモーターに流れる電流が最大になるのでモーターは速く回る

② 光電池を少しくらい斜めに向けても、モーターの回る速さはほとんど変わらない。つまり、よく晴れている日は日光が十分に強いので、日光が少し斜めに当たるくらいでは光電池から流れる電流の大きさは変わらないということなのです。

それでは、これらのことをふまえて、次のような問題を考えてみてください。


【問題】

(1) よく晴れた日の屋外で2枚の光電池を使ってモーターを回すとき、1枚だけのときより勢いよく回すにはどうすればいいですか。

(2) 空が雲でおおわれている日(くもりの日)に2枚の光電池を使ってモーターを回すとき、1枚だけのときより勢いよく回すにはどうすればいいですか。

光電池モジュール ソーラーカー

【解答】(1) 直列つなぎにする    (2) 並列つなぎにする

【解説】

 (1)では、2枚の光電池を直列つなぎにすれば、モーターは勢いよく回ります。この場合は、かん電池を使ってモーターを回す場合と同じです。

 一方、(2)のように、空がくもっていたり教室内の照明の光を当てたりする場合は、モーターは強い光が当たる場合に比べればゆっくり回ります。このような場合には、2枚の光電池を直列つなぎにしてもモーターの回る速さはほとんど変わりません。そのかわり、2枚の光電池を並列つなぎにすればモーターに流れる電流が大きくなって、勢いよく回るようになります。


【保護者の方へ】

 最近の中学入試では年々実験に関する出題が増えてきており、今回ご紹介した光電池に関する問題は今後も入試に出題されるでしょう。後述するような理論を突き詰めれば、小学生どころか大人でも理解するのに一苦労するのですが、実験そのものは簡単に行えるものです。材料となる光電池はネット通販などで安価に入手できますので、短時間でできる自由研究として親子で挑戦してみてはいかがでしょうか。

 理科(科学)は結果がすべてであり、その結果を理解するために理論があるのです。実験の結果(得られる事実)は非常に重要であり、それを自分の目できちんと認識するという経験をぜひ大切になさってください。

 また、実験をうまく行うためには工夫も必要です。例えば、(2)について調べるために曇りの日が来るまで待つ必要はありません。カーテンを使うなどして光電池に当たる光の強さ(明るさ)を調節して実験をすれば簡単に確かめることができます。こうしたアイデアを考えることも貴重な経験になるでしょう。光電池が1枚のときに、モーターがゆっくり回るようにしてから実験を行ってみてください。


【発展事項】  レベル表示:★★★★

 保護者向けに今回の光電池に関する実験の理論を解説しておきます。以下の内容は、小学生のお子様が必ず理解しなければならない内容ではありませんのでご注意ください。

 (1)のように光電池(モジュール)に強い光が当たっている場合、1枚のモジュールが流す電流は最大値となり、2枚の光電池を直列につないでも電流は増えませんが電圧が大きくなります。実験に使う直流モーターには、電流が同じでも電圧が高いほどよく回るという性質があるので、2枚のモジュールを直列につなぐとモーターが速く回るというのが本当の理由です。

 一方、(2)のようにモジュールに当たる光が弱い場合は、直列つなぎにするよりも並列つなぎにする方がよく回ります。かん電池は一定の電圧を保つ定電圧電源ですが、光電池は一定の電流を保つ定電流電源です。つまり、電流が増えない直列つなぎより、並列つなぎにして電流を2倍にする方がよく回るようになる、ということなのです。

 実際、教科書出版社が公表する教師用指導書にもこれに関する記述があり、「生徒が乾電池と混同して混乱するので、深掘りしない方がよい」という注意が書いてあるほどです。そのため、小学校の授業ではモジュールを2枚使う実験は行いません。しかし、中学入試の問題ではそこを飛び越えて「どんな結果になるのか、観察したことはあるでしょう?」という経験を尋ねる問題を出すのです。もちろん、最難関校になれば文章やグラフを紹介しながら考えさせるような問題が出題されることはあり得ます。

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