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月の満ち欠け(4) ~名まえのある月は5つだけじゃない?!~

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〔2020/05/24〕

 皆さんが名まえを知っている月と言えば、新月・三日月・満月・上弦の月・下弦の月の5つがありますね。しかし、今ではあまり使われなくなりましたが、他にもさまざまな名まえのつけられた月があるのです。今回は、そんな月のお話をしましょう。

 昔の人々にとって、月は現在では想像できないほど大切な存在でした。今では夜になっても、街灯・お店の照明・住宅の灯りなどがあちこちで輝き、真っ暗な道などどこにもないのは、街中に住む人にとって当たり前の光景です。しかし、昔は夜になればどこもかしこも真っ暗になるのがふつうでした。提灯(ちょうちん)を持って出歩くことができるような人はごく一部のお金持ちだけで、多くの人々は月明かりだけを頼りに夜道を歩いていました。夜道を照らしてくれる月は人々にとって非常に貴重なものでした。そのため、人々は月にさまざまな名まえをつけて、 夜明けの満月 月が出るのを心待ちにしていたのです。

 月が満ちることを望(ぼう)といい、欠けることを朔(さく)といいます。そのため、満月には望月(もちづき)という別名があります。また、満月は十五夜の月とも呼ばれます。これは、満月の月齢が15にちなんだものです。一晩中暗やみを照らし続けてくれる月だからこそ、人々は満月をさまざまな呼び名をつけて大切にしていたのです。

 満月の次の夜に見られるのが、月齢16の十六夜月です。人々はこの月を「いざよいのつき」と呼びました。満月は日の入りのころに上り、月の出の時刻は毎日約50分ずつ遅くなります。また、日本には昔から完全ではないものに「奥ゆかしさ」を感じる独特の文化があります。満月という全盛の時を過ぎて、少し欠けて不完全な形になった十六夜月が、日の入りから50分ほど遅れて"ためらいがちに"上ってくるようすを奥ゆかしさと表現するいかにも日本的な感覚から、十六夜の月は「最も美しい月」とされてきたのです。

 この他にも、人々のユーモアも感じさせる少し変わった名まえの月があります。月齢17の月は立待月(たちまちのつき)と呼ばれ、月齢18の月は居待月(いまちのつき)と呼ばれていました。立待月が上るのは、日没からおよそ1時間40分後(100分後)です。月が出ていない暗い夜道はこわいので、人々は月が出るのを玄関先でウロウロ歩き回りながら待っていたことから、こんな名まえがついたわけです。その次の日、居待月の月の出は、日没のおよそ2時間30分後(150分後)です。さすがに2時間半もウロウロすれば、出かける前に疲れちゃいますよね? だから「座って待つ」ので"居待"となるわけです。ちなみに、昔の座る(居る)というのは正座が基本です。2時間半も正座して待っていたら・・・・足がしびれてしまうと思いませんか?

 ここで問題です! 月齢19の月にも「〇待月」という名まえがあります。○にあてはまる漢字は何ですか? 答えはこの記事の最後に書いておきますね。この問題は、ある中学校の入試問題です。こうした名まえのつけ方を見ると、昔の人がいかに月が出てくるのを待ち望んでいたのかが垣間見えますね。それでは、お話を続けましょう。

有明月・暁月

 月齢20の月は更待月(ふけまちづき)と呼ばれていました。この月が上るのは23時ごろなので、"夜がふけたころに上る月"という意味です。また、月齢26の月(右の写真)は有明月(ありあけのつき)と呼ばれていました。有明は夜明けという意味なので、"夜明け前に上る月"ということです。夜明け前のことは暁(あかつき)とも言うので、この月には暁月(ぎょうげつ)という名まえもあります。なお、「有明の月」は元々は夜が明けても見られる月齢16以降の月をまとめて表す呼び名です。このように、昔の人々の生活は月の動きと深い関係があるものでした。だからこそ、人々は月にさまざまな名まえをつけて大切にしていたのです。


 ところで、昔の人は何でそうまでして月が出るのを待たなければならなかったのでしょうか? どうせ月は出てくるのだから、少しくらい暗くても出かけてしまえばいいと思いますよね。ここからはまったくの余談ですが、昔の人は大人でも本気でおばけがいると信じていたのです。月明かりがない真っ暗な夜はおばけにおそわれるから“こわい”と本気で思っていました。だから月が出るのを辛抱強く待つしかなかったというわけです。

 皆さんは夜中に1人でトイレにいけますよね? でも、昔の人にとって夜にトイレへ行くのは大変でした。だから、貴族の中には寝室に“おまる”を持ちこむのがふつうでした。これなら夜中に寝室から出なくてすみますからね。もっとスゴイ人もいました。夜中にトイレに行くときは、刀ややりなどの武器を持った何人ものお供に守られながらトイレに向かいます。そして、ドアを開けたままします! ドアを閉めてたらおばけにおそわれるかもしれないでしょう? そのようすを想像したら、ちょっと笑っちゃいますね。でも、平安時代の役人で最も天皇に信用されていたのは陰陽師(おんみょうじ)です。陰陽師は天皇に仕え、天皇をおばけから守る役人です。当時の役人の中でも特別えらい人だったんですよ。


(保護者の方へ)

 今回はいろいろな月を紹介しましたが、まず入試で必要なのは最初に紹介した5つの月です12日の月・18日の月 その他の月は、"時々は出題されるので知っていれば役に立つ"という位置づけです。なお、一部の塾では、有明月を「逆三日月」、12日の月「丸上弦」、18日の月を「丸下弦」等と呼ばせて教えているようなことがあります。いずれも塾の中だけでしか通じない名称で、模試や入試で書いても決して正解にならない名まえです。中にはそうした区別がつかないままのお子様もおりますので、どうぞご注意ください。

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問題の答え:寝待月(ねまちのつき)ということで、答えは「寝」です。


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