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中学受験で培う正しい勉強方法の基礎

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〔2019/03/01 改訂〕

 受験勉強を始めたり続けたりしていく上で最も大切なことは何でしょうか。それは小さな努力を積み重ねていくことなのだと私は思っています。私は理科の指導を専門にしていますが、個人指導(家庭教師)に伺ったときに受験勉強の全般について話が及ぶこともあります。例えば夏休み前に6年生を指導しているときなら、夏休みが始まる前に算数や国語の基礎を確実に固めておく必要があるということは必ず申し上げます。そのときに私が必ずお話しするのが次のような勉強法です。これは入試までにまだ十分な時間的余裕のある5年生以下のお子様にも役に立つ勉強法ですので、ぜひ参考になさってください。

セーフコフィールド

 メジャーリーグで活躍するイチロー選手は、他の誰よりも早く球場に入り(試合開始時刻の数時間も前です!)、自らが決めたウォーミングアップを黙々と行うことは有名です。ある監督は、「彼の動きを見れば、試合開始までにあと何分残っているはすぐわかるんだ。実際、それは数分の誤差もないほど正確なのだよ」と驚愕の表情で語っています。イチロー選手はまるで精密機械のように毎日欠かさずに適切な準備をして試合に臨むのです。10年連続で200本以上の安打を叩き出し、27歳でメジャーに渡ったにもかかわらず3000安打を記録するなど、メジャーの歴史に名を残すプレイの数々は、そうした準備の賜物なのです。

 話を戻すと、中学受験の世界では毎日の「計算・漢字・音読」が試合前のウォーミングアップと同じ意味を持つものになります。例えば、算数ではどんな問題を解くときも常に何らかの計算をしているものです。スイスイと問題を解く生徒は、思考の流れが計算によって邪魔されることはありませんが、計算が苦手な生徒はそうはいきません。分数計算が苦手な生徒は思考の過程で苦手な分数計算が出てくるとわかった途端に思考が途切れるそうです。どんな計算も正確に行う力を身に着けるためにも、毎日10分の計算練習を欠かさず続けるのは大切なことなのです。

 漢字も同様です。小学校で習う漢字はわずか1006字で、そのうち3年生までに習う平易な漢字(山、川、海など)は440字です。つまり、実質的に覚える漢字の数は570字足らずですから、漢字は完璧にマスターできるはずなのです。そうは言っても、大人でも教育漢字を自在に操れる人はそういません。だからこそ、小学校で習う漢字の本が売れるのでしょう(笑)。漢字がすらすらと読み書きできることは、勉強を進める上で極めて重要です。理科や社会の知識を学ぶにしても、結局は文章を読んで理解する必要があるからです。すべての学習の要である国語の学習の基礎となる漢字も、毎日10分の練習を欠かさず続ける必要があるのです。

音読

 最後のメニューが音読です。「いったい音読と受験勉強にどんな関係があるの?」と不思議に思われる方もいるでしょう。しかし、音読は脳の活性化を促す最上の学習法とも言われています。音読は日本語の認識(情報入力)と表現(音声出力)を同時に行います。それをすることによって脳の血流量が増加するので、極めて効率よく脳を活性化するのです。音読には、頭の回転が早くしたり、思考力や発想力を高めたり、学習した知識を生かす応用力を向上させる効果まであるのです。これが、私が毎日の音読を強く推奨する理由です。

 さて、音読の教材には最初は学校の教科書などがよいでしょう。いわゆる名作でなくても構いません。お手持ちのお気に入りの本でもいいでしょう。物語文などを情感たっぷりに朗読することは脳の活性化を促します。音読に慣れてくれば平家物語や方丈記といった古典作品もおすすめです。文にリズムがあることが効果を高めるのです。最近注目されている漢文の素読などもお勧めです。青空文庫などで入手されて読んでみてはいかがでしょうか。

 最後に大切なことを1つ。お子様にとって「計算・漢字・音読」の“3点セット”を毎日続けることは、実は相当に大変なことです。この3つを毎日の歯磨きのように深く習慣化させるには、保護者の方の協力が不可欠なのです。親子で一緒にやってみたり温かく励ましてあげたりして、どんな小さなことでも続けることの大切さを粘り強く伝え続けることが必要です。決して簡単なことではありませんが、ぜひ親子で力を合わせて継続できるようにやってみてください。

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