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中学受験がもたらす“合格以上の価値ある力”とは

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〔2019/03/06 改訂〕

 前回は、次の2つのことをお話しました。

 ① 宿題は授業の直後にやりましょう。

 ② テストの直前に初めて勉強しているようでは、学力は決して蓄積されていきません。

 これらの2つのルールはとても理に適ったものです。しかし、その有効性を親子で十分に納得できたとしても、現実にはなかなか定着させられません。いつの間にかテスト日程に追われて、テスト前日(直前)に勉強するという“元の悪い状態”に戻ってしまうということもしばしばです。いったいなぜなのでしょうか?

ゆらぎ

 その理由を一言で言えば、漠然とした不安感とでも言い表せるのではないでしょうか。どんなお子様でも塾のクラスの上下はとても気になるものです。まして真面目に勉強しているお子様ならなおさらでしょう。子どもたちが「クラスを上げる(または維持する)ためにどうやって点数を確保しようか?」と考えるとき、真っ先に思いつくのは出題範囲の限られた週例テストで1点でも多く得点を積み重ねることでしょう。月例テストの方がクラス替えに大きなウェイトを占めるとわかっていても、出題範囲の狭い週例テストが最も対処しやすいことに変わりはありません。

 「目先の点数をいくら重ねても本当の実力ではないよ」とか「範囲の狭いテストで点を取れても、極めて広い範囲から出題される本番の入試の役には立たないよ」といった正論をいくら並べたところで、テストの前日にガッツリと勉強してくる多くのクラスメートたちが自分よりもよい点を出している姿を見れば、「このままどんどん差を広げられてしまうのでは」という不安から「やっぱりテスト前日に勉強しないとテストの点数は上がらない」と考えてしまい、元の状態へと戻っていってしまうのです。

 さらにつけ加えれば、初めのうちは「目先の点数に一喜一憂しなくてもいいから正しい勉強法を続けようね」と言っていた保護者でも、2か月も3か月も芳しくないテストの点数を見せられ続ければ、ついつい「本当にちゃんとやってるの?」などというような言葉をお子様に漏らしてしまうかもしれません。そういう環境の中でもお子様が王道の勉強方法を貫き通すというのは、決して容易ではないでしょう。


 実のところ、ここでご紹介した勉強法を続けられるかどうかは、お子様に対する保護者の態度によって決まると言っても過言ではないでしょう。

きらめくブナ林

 どんなときでもお子様がきっと上手くやれるようになると心の底から信じて疑わず、いつもお子様のそばに寄り添い続けることが大切なのです。お子様が不安を感じているときこそ、どっしりと構えた姿を見せてあげるのです。例えそれが演技であっても、です。このように、いつもお子様に寄り添いながら、お子様の悩みに一緒になってきちんと向かい合い続けることができるか否かこそが、合否を分ける重要な要素の1つになるのではないでしょうか。

 昔からよく、「中学受験は親の受験」とか「合否の9割は親が決める」などと言われますが、私も本当にそうだと思います。そのように言われる理由にはさまざまなものがあるでしょうが、いくつもある理由の中で最も大切なことの1つが「お子様の成長を“信じて待つ”こと」と言えるでしょう。これは、親の“胆力”または“我慢強さ”と言い換えることもできるでしょう。


 お子様が目先のテストの成績に一喜一憂したくなる気持ちはわからないでもありませんが、親までもが子供と同じ土俵で同じような反応を見せてはいけないのです。結果や表層的な過程だけを見て良い・悪いと言ったところで、その後の成功に繋がることは何もありません。点数だけではなく本当に評価すべきポイントに目を向けてやることこそが親の大切な務めではないでしょうか。

 例えば、計算を苦手としていたお子様と「毎日10分間の計算をやる」という約束をしたとしましょう。2か月(あるいは3か月)の間、毎日計算をがんばったお子様が、計算テストで初めて7割を○にしたとき、お子様が言うより先に手放しで褒めてあげられますか? あるいは、相変わらず計算が半分しか取れていなくても、今まではしょっちゅう失点していた分数計算を○にしていることをお子様よりも先に見つけ、それをきちんと褒めてあげられるでしょうか。

 お子様のことを誰よりもよく知っている親であって欲しい、と私は心から思います。たとえ算数はわからなくても、理科を教えられなくても、誰よりもよくお子様を見て今お子様が何をしていて、何に悩んでいて、何を改善しようと努力しているのかさえわかれば、必ず褒めるポイントが見えてくるはずです。そこを親がお子様より先に見つけて褒めてやれれば、お子様はもっともっと努力を重ねてくれるにちがいありません。親に理路整然と褒められて嬉しいと思わないお子様がいるはずがありません。お子様のモチベーションはきっと高まっていくでしょう。

満開の桜

 子どもたちの多くはもうずいぶんと長い間、親から手放しで褒めてもらった記憶がありません。保護者の方にお尋ねしますが、受験勉強のことでお子様を最後に満面の笑みをたたえて褒めたのがいつだったのか、それはどんな理由だったのかをはっきり覚えていますか。お子様がもっと小さかった頃はほんの些細なことでも大喜びして褒めていたのに、勉強のことでそんなふうに褒めなくなってからいったいどのくらい経っているでしょうか


 私がお勧めする勉強法は単なるマニュアルではありません。中学受験で成功するには、強固な親子関係が欠かせません。目指す学校が難関校であればあるほど、より強固な親子関係の構築が求められます。それを実践するにはお子様としっかり向き合うことが何よりも大切なのではないでしょうか

 お子様のことをもっとよく見ていれば、お子様が不安に思う気持ちもずっとよく理解できるでしょう。そんなときに親が自信を持って、「正しいやり方で一緒に勉強を進めていこうよ!」と背中を押してやれば、きっと上手くやれるでしょう。特に、まだまだ入試までに時間がたっぷりとある4・5年生は、ぜひともよい親子関係の構築に心を砕いてください。強固な親子関係を築けば、それが何よりも大きな武器となることにまちがいないのですから。

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