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金属と水溶液の計算問題(基本編)

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〔2019/01/21 改訂〕


 今回は本題となる『金属と水溶液の計算問題』の最も基礎的な解法を解説いたします。前回の内容(金属と水溶液の計算問題(基礎知識編)の例題1)と、溶解度の計算問題(基本編)および溶解度の計算問題(応用編)で扱った比例計算の考え方を理解されていることを前提にして解説をしていきます。


グラフ

例題2 アルミニウム0.2gをいろいろな重さの塩酸にとかしたときに発生する気体の体積を調べたところ、グラフのような結果になりました。これについて、次の問いに答えなさい。

(1) アルミニウム0.2gをすべてとかすには、塩酸が少なくとも何g必要ですか。

(2) アルミニウム1.0gをすべてとかすには、塩酸が少なくとも何g必要ですか。

(3) 750mLの気体を発生させるためには、塩酸が少なくとも何g必要ですか。

(4) 塩酸120gには、最大で何gのアルミニウムをとかすことができますか。


(※ 解答・解説は、問題とともにPDFファイルの3ページ以降に掲載しています。)


 最初にグラフの形に注目してください。気体の発生量は0(原点)から始まって右上がりに一定の割合で増加していきますが途中から水平になります。金属と水溶液が反応して気体が発生する問題では、縦軸に気体の発生量をとると必ずこの形のグラフになります。例え問題にグラフがなくて、表が与えられていたり文章のみしかない問題であっても、そんなことはまったく関係ありません。金属と水溶液の反応に関する計算問題を見たら、必ずこの形のグラフを思い浮かべなければならないということなのです。


 ここでひとつ質問してみましょう。

【確認問題】金属と水溶液の反応において、グラフがこのような形になるのはなぜですか。

(※ 解答・解説は、問題とともにPDFファイルの1ページに掲載しています。)

 今は完璧な答えを求めているわけではありません。この設問が何を尋ねているのかという本質(肝になる重要ポイント)に気付くことができるかどうかを確認したいだけです。最終的にはきちんと文で表現してほしいのですが、ここではしっかりとイメージできることが大切なのです。


 それでは、例題2について改めて触れていきます。グラフの折れ曲がった点はアルミニウムと塩酸が過不足なく反応するときを表しています。つまり、例題2の(1)の答えは、ここから求められるわけです。

 そして、重要なことがもう1つあります。それは、グラフの折れ曲がり点を読み取れば反応のレシピが簡単に書けるということです。計算問題を解くときの基本となる量的関係(過不足なく反応する量)を言葉の化学反応式と合わせて書き出したものを、私は 反応のレシピと呼び、次のように書き出します。

  アルミニウム + 塩酸 → 水素 + (塩化アルミニウム)……言葉の化学反応式

    0.2g     40g   300mL           ……過不足なく反応する量

 反応のレシピさえ書けば、化学の計算問題は楽勝です。例えば、アルミニウムの重さが2倍の0.4gになったとしましょう。そうなれば、それをすべてとかすために必要な塩酸も2倍の80g必要ですし、そのときに発生する水素の体積も2倍の600mLになります。この考え方を使えば、例題2の(2)以降の問題も簡単に答えが導き出せるのです。


 私はいつも「ホットケーキさえ焼ければ化学計算は誰でも解ける」と生徒たちに教えています。お子様が化学の計算問題で本当に困っているのは、計算の難しさなどではありません。どうやって計算式を立てればよいのかがわからないのです。その根本的な原因は、前回のテーマでも何度も繰り返したように「化学反応のイメージが持てないこと」にあります。それを証明するために、こんな例題を用意しました。

例題3 ホットケーキミックスの箱には、「ホットケーキの粉120gと牛乳80mLをよく混ぜてフライパンで焼くと、美味しいホットケーキが2枚焼けます。」と書いてあります。このレシピを使って、次の問いに答えなさい。

(1) ホットケーキの粉が240gあるとき、牛乳は何mL必要ですか。

(2) ホットケーキを6枚焼くには、ホットケーキの粉が何g必要ですか。

(3) 牛乳を400mL使うと、最大で何枚のホットケーキを焼くことができますか。

(※ 解答・解説は、問題とともにPDFファイルの2ページに掲載しています。)


パンケーキ

 答えはすぐに出せるはずです。計算を簡単にするために、すべて整数どうしのかけ算だけで答えが出せる数字に設定してあります。おそらく、この問題なら小学4年生でも解けるはずです。ところで、この例題にはもっと重要な目的があります。

 例題3の設問と例題2の(2)~(4)の問題をしっかりと照らし合わせて見てください。2つの問題が算数的には同一の問題であることがおわかりいただけるでしょう。もしお子様が例題3をスラスラ解けるなら、同じように例題2も解けるはずなのです。しかし、実際にはそうならないことがあります。それこそがお子様が化学の計算問題が解けない真の原因(理由)なのです。

 ホットケーキの問題では、設問に書かれた状況が細かくイメージできるはずです。それどころか、長く焼きすぎると焦げるとかホットケーキの甘い香りでよだれが出そうだとか、答えを出すにはどうでもいいようなことまで容易に想像できるでしょう。しかし、例題2の場合はどうですか? 塩素さんが次々と水素くんの手をふりほどいてアルミニウム君の方へ走り出し、水素くんがぼう然と立ち尽くしている姿を想像しながら問題を考えるお子様はおそらくいませんね(笑)。

悲劇のカップル

 もしお子様に例題2の中で解けない問題があるなら、すぐに解答・解説を見せるのではなく、アルミニウムをホットケーキの粉に、塩酸を牛乳に、水素を焼き上がったホットケーキに読み替えた上で、もう一度問題を解かせてみてください。そうすれば、今度はきっと正解が求められると思います。

 最後に一言。化学の計算問題がスラスラ解けるようになりたいのなら、まず化学反応に関するあらゆる知識をしっかり身に着けましょう。ただ重要語句を覚えるだけではありません。ホットケーキの問題を読んだときに甘い香りまで自然に想像できたように、具体的で細かなイメージが持てるほど深く身に着けることを心がけるとよいでしょう。そうやって身に着けた知識こそが難問に出会っても確実に正解にたどりつくための“底力”となるのです。


〔金属と水溶液の計算問題(基本編)〕の問題・解答PDF

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